第19話 接続

「でも…何処に接続したら良いのかしら…」

遙の表情に焦りの色が浮かぶ。


 何本もの列がサーバーや配線で埋め尽くされており、その広さにどこから何を探すのかと不安が募る。 更にコンピューターの群れが発する音は、まるで唱えられる呪いの言葉のように絶え間なく続き、焦りが増幅していく。


「メインのシステムなら、きっとモニターか、入力出来るキーボードがある筈よ」

 如月の冷静な言葉に一同が安堵を覚える、本当に頼りになる部長だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『ふふっ、流石は如月ね……彼女の言うとおり、目指すシステムは左から3列目中央付近にあるわ』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その時、優弥の声が届く。

「みんな、これじゃ…ないかな…?」

 それは丁度、イアが示した場所の辺りからだった。

 すぐさま駆けつけると、そこには部長の言った様に、モニターとコントロールパネルがあった。


「優弥、やるじゃねーか!早速始めよーぜ!」本田先輩が興奮気味に眺める先に、USBハブが見える。


「わかりました」という遥がスマホにケーブルを接続する手を、俺は制止した。

 イアは微笑を絶やさないままだが、焦燥の想いが伝わってくる。


「遙…俺に任せてくれないか…?」


 遙は「えっ?ええ…」と言い、スマホごと渡そうとするが、イアから『IA』をダウンロードしてもらった経緯を説明し、コードだけ受け取った。

「奏太もダウンロードしてたのね…気が聞くじゃない。」遙の言葉に笑顔を返す。


 ──ただ、俺の『IA』は不完全だけどな。と思いながら。


 そう、イアが夢に出て来た時に、頼んだ事……。

『明日の夜に『IA』をダウンロードして欲しい』

 目的は、『SS』のとき見たく、『IA』を不完全な状態でダウンロードする為だった。

 わざとバッテリー残量を少なくし、その状態でダウンロードする。

 念の為、ダウンロードの最中に強制終了させる準備もしていたが、23時から始まったインストールは、上手いこと50%の時点で電池が無くなりシャットダウンされた。

 電源の切れたスマホを立ち上げると、

アプリの取得に失敗しましたという文字。

しかし、ホーム画面にはしっかり『IA』のアイコンが表示されていた。


「じゃあ、みんな…始めるよ」

『IA』を立ち上げ、コードをサーバーに接続する。その様子を皆は固唾をのみ見守っている。

「じゃあな、イア」

 そう言うと、スマホの画面に表示されている、『送信』をタップした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る