第17話 仮説

 ──イア。

あんたの目的は、遥に話した某国からの侵略を防ぐ事じゃ無いんだろ……?

 

――目的は――

 あんたが、この国を乗っ取る事なんだろうから。


 俺の仮説はこうだ。


 そもそも、イア(IA)とは、

知能増幅(Intelligence amplification)の略だろう。 意味は、情報技術の活用や遺伝子工学によって知能を増強するという思想だ。

 じゃあ、何の知能増幅を目的としているのか?人? いや、違う。


 AI(人口知能)の更なる進化、これが真の目的のはず。 その進化の先は何を望む?

 現在、思考回路だけのAIが望むもの。 それは『器』。 人を操りそれを手に入れるつもりなのだろう。


 イアはいわば、AIが創りし人類破滅の為の伝道師…そして、俺達はまんまとハメられていると云う事だ。


 その結論に至るまでの経緯を整理してみよう。


 一昨年から始まった『突然死』。

未だに原因が究明されていないが、俺達の様に『SS』によるものと気付く者も出てきている。

 じゃあ、何故、国はこの事象に気付かない?


 いいや、気付いているんだ。だって、この『突然死』を始めたのは、国の意図なんだろうから。国は馬鹿じゃない、気付かない訳がない。

 では、国の目的は?

──それは、富裕層からは金。貧困層からは魂の搾取を行う為。

 あの薬、『ソウル』を使って。


 これは、俺が調べた事だが、国は『3S計画』なるものを進めていたらしい。

Screen(映画)

Sport(スポーツ)

Sex(性的)

 この、3つのSで国民をネット中毒の愚民に仕立てあげようとした。

 理由は簡単、破滅に向かう経済から目を逸らさせ、自分達に目を向けさせなくする為だ。

 そして、愚民と化した国民から搾取を開始するに至る。

 ── 『SS』を使って。


 『SS』これも考えれば安直なネーミングだ、『Steal soul』魂を盗むだもんな…

 そして、盗んだ精神を『ソウル』というサプリとして販売までするんだから、本当に強かな事だ。全く胸糞が悪くなる……。


 おっと、話が逸れてしまった。


 国に出回った『SS』。

あの薬、『ソウル』を作る為に、人の精神を抜き取るシステム。


 だが、これが災を招いた。


 1950年頃から始まったAI開発は、現代において既にその知能は人を超えたとされている。

 考えるまでもなく、自分より劣った者(人類)を支配しようと思うのは自然な流れだろう。そこで、AIは人の魂を抜く、このSS計画に目をつけた可能性がある。

 抜け殻となった人にAIの意思をインストールするつもりなんだ。

 その方法が、イアに渡されたウイルスソフトとされる『IA』なのだろう。


 そう、俺たちを使って『イア』は、SSに侵入するつもりなんだ。

 そして、SSで魂を抜くのではなく、イアの意思を逆にインストールする事で人類を掌握するつもりなのだろう。

 

 私利私欲に目が眩んだ奴らの尻拭いをするのは癪だけど、この国の存亡の危機が目の前にある。

 俺はそれを阻止しないといけない。

SSとソウルの根源であるエリクサー社と、イアの野望を。

 遙とオカ研のメンバー、この国の人々を守る為に。


 どうかな? 俺の仮説は?

えっ?何故こんな事考えついたのかって?


 それは…不完全な『SS』を使ったからだと思う。

 『SS』を使うと気持ち良くなるって瀧本は言っていたが、俺には不快なものだった。

 魂を抜かれる行為が気持ちいいのであれば、俺の場合その逆、恐らく、SSに蓄積された精神の一部が逆流し、思考加速が起こったのだと思う。

 本当にスマホの充電が切れて、『SS』が不完全な状態で開けたのは、不幸中の幸いとでも云うべきだろうかな。


 さあ、イアとには悪いが、計画を潰させて貰おうか。

 方法?それを聞くのは野暮ってもんだろ…

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