第14話 単独行動

「皆、頑張れっ!ここを越えれば、目的地だっ!」

 本田先輩が俺と優弥に励ましの声を掛ける。

 額には大粒の汗が、月の光を受け輝いていた。

 切立った3メートル程の岩場が行く手を阻むが、よじ登る掌に力がみなぎってくるのは、晩御飯で食べたカレーの力かもしれない。あんな旨いカレーがこの世に存在していたなんて…


 …話を戻そう、俺達は単独行動に出た…

 「あっ!!」優弥の足元が崩れ、危うく

転落しそうになる。

 「大丈夫かっ!気を付けろっ!気付かれたら終わりだ!」

 「はい、すいません!」

優弥の瞳にも闘志が宿っている。

 崖を登り終えると、目の前に木で出来た高い壁が姿を現した。辺りには湯気が漂っている…

 そう!此処は宿舎が誇る『露天風呂』の裏手側!俺は胸の高鳴りを抑えるのに必死になった!

 「本田隊長!…これでは中の様子が覗えませんが、何か策があるんですか?」

 俺の言葉に帰ってきたのは驚愕的な内容だった。「いいか、一年坊主。俺様はこの日の為に、去年の合宿で女子風呂の壁に、覗穴ドリームホールを開けておいた。同部屋だった事を幸運に思うんだな!」

 遙の言っていた言葉に間違いなかった!

正に、女にとって本田先輩は、『ナイス害』であり、男にとってはメシアだ!

 「さあ!お前ら!行くぜ!」

本田先輩の指差す先に小さな穴がっ!

大きな希望の光がっ!!


「「隊長!宜しくお願い致します!」」

俺と優弥の言葉に本田先輩はゆっくり頷き覗き込む!


「お…お……」本田先輩の目が見開かれ、

身体が硬直する。

 隊長!その言葉の続きは…『おっきい』ですかっ!『お◯ぱい』それとも『おしり』ですかぁあ!!


「……っさん…」

誰さんが見えるのですかっ!名詞をどうか我らに!タイチョー!

と、おあずけが限界に達した俺達に本田先輩が呟いた言葉は…


「すまない…この不甲斐ない俺を許してくれ…」って…はい?

 本田先輩はそう言うと後ずさり、そのまま尻もちをつく。

 すぐさま、俺は穴から覗き込んだ…

そこには、此方に向かって座り、豪快に髪を洗うおっさん…もとい、豊田副部長の姿があった………


 ※良い子は絶対真似しないでね!

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