第13話 海だ
本田先輩 「いいよな…」
関君 「はい…とても」
俺 「綺麗ですね…美しい…」
……何がだって?
もちろん、燦然と輝く太陽を反射させ輝く青い海。 それもさることながら、水着姿の…
それは、なんだ、つまり『良いものは良い』という事だ! 海が生み出すハジケル夏さ!
「そこの三人は泳がないのかしら?」
白いビキニ姿の部長……。悩殺は犯罪になると思った瞬間だ。
「奏太だけじゃなく、先輩まで何て表情してるんですかっ!!」
遙…お前も大きくなったな……。
「奏太君、一緒に泳ぎましょうよ!」
由紀さん…喜んで……遙サン…目が怖いですよ?
楽しい時間はあっという間に過ぎる。
そして、楽しい事に理由は要らないんだな。
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気がつけば辺りは茜色に染まり、さざめく波の音と、緩やかな風が火照った体に心地よく吹き付けていた。
「あ〜! 楽しかった!」
大きな一枚岩の上で隣に腰掛ける遙が、夕日に顔を向けたまま興奮冷めやまぬといった様子で大きな声で話す。
「本当に面白かったな! 特に、遙が躓いて、顔から全身まで砂だらけになったのは、傑作だったよ!」
「ちょっと!それは忘れてっ!」
そう云い二人して笑う。 その後、沈みゆく夕日を眺め、しばしの沈黙が訪れる…。
遠くを眺めていた遙が不意に、そっと口を開いた。
「明後日大丈夫よね……」
気丈に振る舞っていても、やっぱり遙は女の子なんだな。
「ああ、きっと上手く行くさ、俺を信じてくれ」
その言葉に遙は不安げな視線をよこす。
「奏太、覚えてる? あなたがサッカーで負傷した『試合』の日、同じ言葉を言ってたの。何だか、私、嫌な予感がして……」
そうだったか? でも、実は俺って器が小さいんだ……。 だから、軽口叩いていないと押しつぶされそうで。
「問題ないさ! ぱぱっと終わらせて、後は知らんぷりからの脱出だけさ!」
── 本当は、俺だって怖いさ。でも、怯えてばかりじゃ物事は動かないだろう?
遙は「本当にお気楽なんだから。」と言い、笑みが浮かぶ。
俺は立ち上がると、海水パンツにこびりついた砂を払う。
「さて、と! そろそろ帰ろうぜ。カレーが俺達を待っているはずだからな!」
二人して砂浜をゆっくり歩く、
潮の満ち引きが奏でる等間隔な音色は、まるで不安な気持ちを拭ってくれるかのようだ。
ふと、顔を上げるとエリクサー社が目に映る。
その姿は夕日を受け、血のような赤に染まっていた……。
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