第12話 発表準備
「いらっしゃい!あらっ!? 茜ちゃん、この一年で更に綺麗になったわね!」
宿泊施設に入るや否や、恰幅の良い女性が出迎えてくれた。『茜ちゃん』こと、如月部長がお辞儀した後、笑顔で答える。
「ご無沙汰しております。
部長が笑顔で挨拶をする中、奥から『ドタドタ』という足音と共に、これまた恰幅の良い男性が現れる。
「おう!来たか、楽しんで行けよ!」そう言い残し、大量に野菜と肉が詰め込まれた籠を持って反対側の通路に去っていった。
この施設を切り盛りしている乾夫妻だ。
俺の勘は何故か冴え渡っている……。
また一つ真理に近づいた様だ。
「遙…今夜は夏野菜のカレーだっ!」
そうっ! 俺のソウルフード! 合宿では外せないお約束だっ!
「はあ…思い出したわ。 昔の奏太は、お気楽能天気だった事。でも、まあ、お帰り…奏太」
遙も先程の暗い表情は消え去り、笑顔が弾けた。
この部活に入ってからは、胸の奥にあったモヤは晴れ、清々しい気分になれた。
遙には感謝しないとな……。
──そして、守ってやらないといけないな。
割り当てられた部屋は三人で一室、俺は関君と本田先輩が同室だった。
各自荷物を置いたあと、食堂兼研修室の1階に集合する運びとなり、今、明日の発表でのあらすじを各自が発表している。
そして、俺の番。ここで、想いとは裏腹の理論を皆に向け発表する。
そう、『イア』に気付かれると面倒になりかねないからだ。
「……以上の事から『突然死』の原因においては、『SS』によるもので間違い無いと思っています。 遥の夢に出てきた女の言い分……『この国への侵略戦争』を止めるために、明後日エリクサー社に潜入します。 明日は、自分なりに『突然死』について考えた推測を発表したいと思っています」
皆が俺の言動に注目している。
そして、きっとイアは聴いている……。
「明日の本番、楽しみにしているわね」
如月部長が涼しい笑顔を向けてくれた。
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そして、発表が終わった直後、俺の頭に言葉が響く。
── 久々の登場って訳だ。
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『楽しみにしているわ』
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俺は、あんたの思い通りにはさせない…
スマホの画面にある1つのアイコンに目を落とす。『IA』と表示されたそれは、イアが夢に現れたあの日に、インストールをお願いしたウイルスソフトだった。
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