第4話 瑛華学園新聞部

 とある春のうららかな日。桜も一枚、また一枚と散りゆく季節となった。新聞部はそんな景色を楽しみながら、優雅にお茶会を…


「遅い遅い遅いっ!あぁもう、期日に間に合うのっ⁉︎まだタイトルが決まってないってどういう状況なのよ!」

 …していなかった。まだ、記念すべき1回目の瑛華新聞が出来上がっていないのだ。しかし無情にも、時はその流れに逆らうことなく過ぎて行き、期日は1週間後となろうとしていた。新聞のお題は、[進級・進学おめでとう]という物だ。本来ならば、こんな新聞は10日間もあれば終わる。なのに何故終わっていないかと言うと、如何してもそれに見合い、尚且つ学校をPR出来る様な良いタイトルが思い浮かばないからであった。1週間前は部長もこんなにピリピリしていなかったのだが、果てさて如何した事やら、とどこか他人事の様に傍観していたら、

「じゃあ先程から何も発言せず、俯いている佐々木君。勿論タイトルについて考えていたのよね?候補案を出してくれる?」

 ひぃっ後ろのオーラがどす黒いです、部長様。。。と言っても何も考えていなかった。「さあ、背番号10番、佐々木選手どう切り抜けていくのでしょうかっ」…実況がうるさい。黙るんだ、脳内の僕。脳内をフル回転、この前辞書で見つけたある言葉を思い出した。

「…《Change your life−常に高踏、理念を掲げよ–》などは如何でしょうか」言った瞬間から、場の空気が重く鋭い物になっていく。本気で検討しているのか、はたまた、うわ、あの人…という謂わゆる"どんびき"とやらなのか。頼むから前者であってくれ…と切に願うぼくの願いは届いているのだろうか。長い−例え3分しか経ってなくとも僕には30分のように感じた−沈黙の後に、ようやく部長が口を開いた。「採用」えっ?自分で言っといて何だけど、こんなタイトルにしていいの?本気?本気と書いてガチと呼ぶ?ま、嬉しいから良いんだけど。

「でも、こんないい案があるならもっと早くに言って欲しかったわ。ちょぉっとだけ怒っちゃったじゃない」

 あ、あれがちょっとなのか…いやはや女性とは恐しい。

「さて、と。じゃあタイトルも決まった事だし、発行致しましょうか。」

 さっきとの違いが半端じゃないな。いや、しかしこれが通常運転だから、うん。さっきのは、非常に危機的状況にいた訳ですな。…自覚なかったな。地雷を踏み抜かなくて良かった。

 他の人とは違う感想を抱く佐々木君でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る