第134話「言われてみれば」


「あ」


 確かに、欠陥魔法で胸が異常発育するならあのおっぱいお化けを俺が連れてきた理由と最強主人公ちゃんが見ても不思議はない。言われるまで気づきもしなかったが、欠陥魔法使用者だと見て何かやらかす前に確保したのだとしても辻褄は遭うのだ。


「確かにそうとられてもおかしくはないな」


 だが、誤解は訂正しておくべきだろう。欠陥魔法など使っていないのだからその副作用があのおっぱいお化けに出ていないのは当然だが、使ってしまっても欠点をどうにかするすべがあるんだと誤解されては拙い。


「だが、敢て言うがあいつの胸が大きいのは別の理由で、仕組みについては俺も理解していない。いずれ調べねばならんとは思うのだがな」


 ただの動物を魔物に変質させてしまう力の流用だとあのおっぱいお化けは言っていた気がするが、動物を魔物に変える現象など放置していいものではない。隣国の香草があれば魔物が共通でもつ人への敵意の方は何とかできるとはわかったが、それも対処療法にしかならない。


「そうですか、別の理由……わかりました。では、調べる時には教えていただけますか?」

「ん?」

「教官にはお世話になりましたから!」


 何故教える必要があるのか、疑問に思ったが、問いを発するより最強主人公ちゃんが再び口を開く方が早かった。


「仕組みがわかって、検証が必要なときはボクを、ボクの身体を使ってください!」

「は?」


 言っていることを理解するのに少し時間を要したが、おおよそのことは理解した、ただ。


「悪いが、無理だ」

「えっ」

「いや、一学生の身体を実験台に使うというのも問題だが、解明もされていない身体の異変の解析に士官学校の一学生を加わらせることが出来るはずないだろう?」


 何故か驚く最強主人公ちゃんだが、あのおっぱいお化けの肉体変化の仕組みは解明できたなら国家機密レベルの技術となる。当然関われる人間も様々な条件が付くはずであり。


「あの欠陥魔法のいいとこだけを取ったモノになる可能性があるんだぞ? 価値は計り知れず、その方法を何とか盗み出そうとする国とて現れかねん。秘密と……秘密を探るために誘拐される可能性もあるからな、他国の工作員などから狙われて己の身を守れる人物でかつ国から一定の評価を受け信頼されていなければ、関わることは到底無理だ」


 最強主人公ちゃんの素質なら、遠くない未来に至れるかもしれないが今はあくまで新入生の一人にすぎない。だから、俺の対応も板って常識的なモノになる。


「ううっ、わかりました。教官の仰ることももっともです。だけど、ボクは諦めません。ここを卒業して、昇進していつかその解明に関われるようになって見せます、その時は、どうか――」

「国が許可を出したなら、俺に駄目だという権利はない。実験台に進んでなりたい人間も希少だろうしな」


 根負けしたというより、ここでごねようがどうしようが最終的に実験台の座を勝ち取りそうな気がして、俺は諦念と共に肩をすくめる。放言かもしれないが、本気になった最強主人公ちゃんを踏み台転生者の俺が止められるとは思えない。


「ありがとうございまつ! ボク、きっとあのおっきいおっぱいを手に入れて見せます!」


 どうコメントしていいのかわからない最強主人公ちゃんの感謝の言葉を聞きながら俺はただ遠い目をするのだった。



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