第126話「おはよう」


「おはよう」


 挨拶は重要だ。だから、目覚めた最強主人公ちゃんになんというべきか考えに考えて出した結論がそれだったのは、問題ないと思う。


「目が覚めたか」


 だとか。


「気分はどうだ」


 みたいなモノの方が一般的かな、とも思った。ただ、最強主人公ちゃんのやらかしをカバーは出来たが危ういモノだった俺としては、少々思うところもあって、俺はおはようを選んだ。


「……おはようございます」


 これに少し間をあけたものの、挨拶はちゃんと返ってきたとなれば、俺は許されたと見て良いと思う。


「状況は把握しているか? 出来てないならこちらで説明するが」

「えっ、あ、大丈夫、大丈夫でつ」


 三途の川に偽装したここで一度目を覚まして話をしたので大丈夫だとは思うものの、俺が問えば、最強主人公ちゃんはあわてて頭を振って見せ。


「そうか、ならばいい。ただ、これだけは聞いておかねばならんが……続けるか?」


 俺が口にした問いは、最強主人公ちゃんが起きるのを待ちながら考えていたもの。


「つづき? あ、あぁ……濡れて、ない?」

「俺が魔法で被害は防いだ」


 俺の問いかけで浴場の状況に思い至ったのだろう。周囲を見回して目を見張る最強主人公ちゃんへ端的に答え。


「その上で言っておく、個人で魔法を練習する時は俺に監督を申請しろ」


 俺だから間に合ったが、普通の教官で最強主人公ちゃんのやらかしを何とかするのは厳しかろう。


「っ、すみません」

「謝ることはない。学生のミスをフォローするところまで教官の仕事だ」


 規格外な最強主人公ちゃんでなければ、他の教官であっても何とかできたであろう。逆に言うなら、この才能で真っ当に育ってくれれば心強いことこの上ないが。


「しかし、な」


 今回の様に制御に失敗するとなると話は別だ。とんでもない人材がいると最強主人公ちゃんの出身地が話題に上ったことがないところからすると、最強主人公ちゃんの才能は突然変異的なモノなんじゃないかなと思うが、ふと考えてしまう。


「もし最強主人公ちゃんに子供が出来て、この才能を引き継いでいた場合」


 と言う、ありそうな未来を。最強主人公ちゃんが居るなら、子供の監督は最強主人公ちゃんに任せればいい。だが、子供が複数いる場合は、どうなるか。


「教官、どうされました?」

「いや、なんでもない」


 その頃は踏み台にされてフェードアウトしてるはずだから大丈夫なはずだが、現役だったら子供のお守りに駆り出されていたのではないだろうか。


「そうだな」


 来年の話をしたら鬼が笑うと言うが、仮定は更に何年も先の話だ。ならそれまでにお守りができる人材を育成すればいいだけのことであり。


「強化カリキュラムでも考えるか」


 場合によっては殿下の修行メニューも参考にしつつこの国の戦力の底上げになってくれれば有事の際にも役に立つ。殿下をあのおっぱいお化けが認める強さに鍛え上げなければいけないのはもうほぼ確定なのだ。効率のいいトレーニングについて、俺は思いをはせ。


「あ」


 若き日の過ちを思い出した。


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