第117話「お宅訪問、それと」*
『言うのが遅れましたが、この小説は18禁ではないと思います』
頂いたコメントに、俺は安堵した。こう、最強主人公ちゃんのお宅訪問的なタイミングではあったのだが、訪問直前のタイミングで、新しいコメントがあることに俺は気づいたのだ。
「タイミングがタイミングだからこう、訪問におけるアドバイスかなとも思ったが、それもりもなんだ、その、こう……」
本当にホッとした。最強主人公ちゃんのした誤解の内容が内容だけに、このお話が成人向けだったらとんでもないことになってしまうのではないかと言う危惧も、心の中にはあった。だがこれで、意味もない警戒をせずに済むようになるのだ。
「まぁ、よくよく考えればそっち系だったらあのおっぱいお化けの番から逃れられている筈がないな」
きっとここぞとばかりにお子様には見られない展開へ突入していたことだろう。
「ともあれ、このタイミングで事実が判明したのは行幸だ」
過剰な警戒をしなくて済むし、気も楽になった。
「もっとも、あの作者の事だから油断すれば足元をすくわれるだろう」
副教官とのラッキー何とかの様に不自然なハプニングを起こしてくることは充分ありうる。
「現状だと、ベタなのはあれだな。最強主人公ちゃんが寮に戻ったことで着替えていて、それに気づかず、誤解を解くのに逸った俺がドアを開けて入って行ってしまうと言う――」
所謂着替えシーンとの遭遇だが、これ現実では実際起こりえないと思う方が多いかもしれないが、俺は前世で一回、一回だけとはいえ本当に遭遇したことがある。つまり、回数とかタイミングなんかで誇張ははかられるが、基本的に現実で起こってもおかしくないハプニングと言うことだ。
「学生へ割り当てられる寮だからな」
かなりの数があることから構造はシンプルでトイレや浴室は共用の為、学生個人に与えられる寮の部屋は恵まれているケースでも一人一つ。最強主人公ちゃんは始業式前に寮を使用していることからルームメイトも居らず、この恵まれているケースだとは思うが、扉を開けたらすぐ室内ということだけは動かしようがない。
「安易に扉を開けたら、それだけでハプニングと遭遇しかねない」
だから俺は、まず最初に強くドアをノックする。
「聞こえていない可能性だってあるしな」
ドアノブに手をかけるのは、中から返事がしてからだ。ここまでやるのかと思われるかもしれないが、敢てやる。
「あとは」
上を見て、右を見て、左を見る。
「とりあえず下着がひらひら舞い降りてくることもなさそうだ」
頂いたコメントはきちんと血肉にせねばならない。俺なら物理法則を捻じ曲げて下着が降ってきそうだとコメントを頂いている。
「あのコメントは作者だって見ているはず、今ここで採用してきたって不思議は……ん?」
ないと言い切ろうとした瞬間、俺は唐突な風を感じて振り返った。
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