第113話「迷った時はコメントを見よう」*
「うん?」
気づいたのはほんの偶然だった。いつの間にかコメントの数が二つもぞうかしていたのだ。
「タイミングがタイミングだしな」
助言の類かもしれない。俺はさっそく拝見させていただくことにし、意識を脳内に向ける。
『主人公ちゃんの一言でスーさんと我々に痛烈なダイレクトアタック! スーさんなら蝶じゃなくて乾いてなくても物理的法則を破ってお約束通りになったんだろうなぁ』
待って、ちょっと待って。
「当方にそんな機能は備えられておりませんよ?」
前半分はわかる、心を抉られたから。だが後半は、ちょっと。
「魔法は使えるし、転生者だが、ごく普通の人間だぞ?」
そんな法則まで無視してハプニングを起こすような特殊体質はしていないと思う。もしそんな奇怪な体質だったら、あの入居手伝いの時だって、たまたま下着を手に取ってしまった時点ですっ転び、頭からパンツをかぶってしまうぐらいの事態になっていた筈だ。
「だから宿舎の入り口側に回り込んで上方を仰いだところで都合よく二階のベランダに干された洗濯物がヒラヒラと風に揺れていることなんてありえない」
口にした通りの現実が視界の中にあったならそれは間違いなく幻覚だろう。
「さてと」
コメントはもう一件頂いていた筈。俺は再び脳内に意識を持って行き。
『主人公ちゃんを見習って正面から行った方が色々好転しそうですねぇ』
冒頭の一文を確認して、なるほどと声を漏らす。正面から行く気になった最強主人公ちゃんだからこそ、話せば答えてくれるかもしれないということか。
「ならば、あちらの話が終わるまで待たねばな」
それと最強主人公ちゃんと教え子の会話に加わるのは話が別だ。
『昆虫みたいな小型の使い魔、もしくは式神みたいなものはないんですかね?』
とも質問を頂いていたが、使い魔系は自立志向する分身を作成する魔法の研究を行わなかったのと同じで、一定以上の知能及び判断力を持った疑似生物は反逆の可能性を鑑み研究もしていないのだ。
「盗聴系は下手に技術が他国に流れると盗聴合戦とかになる恐れもあるしな。おちおち独り言も言えないのは――」
独言癖のある俺には辛すぎる。とはいえ、頂いた助言を無にするつもりもない。
「泥縄の様な気もするが、研究は始めるか」
主人公ちゃんを見習うことにするなら、ここからの盗み聞きはNGだ。
「とは言え、ただ待つのも不自然、ならば」
俺は最強主人公ちゃんが尋ねた宿舎の隣の宿舎に向かいながら透明化を解く。おっぱいお化けの入居手伝いの礼をしにと言う名目で目の前の宿舎に居るであろう教え子を訪問するのだ。
「礼を言い終えて次の教え子の元を訪ねた、とすれば最強主人公ちゃんと鉢合わせになっても不自然じゃないしな」
助言をもらったなら、出来ることから即実行という訳だ。
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