第105話「変態VS」

「げべっ」


 期待とかされたなら申し訳ないが、下着泥棒は振り下ろした俺の手刀一撃で突っ伏し、動かなくなった。


「身体能力が強化されているうえに不意をうてば、まぁ、そうなるなッ」


 見どころはゼロだが、半裸の変態と下着泥棒の戦い何て基本的に誰が得するのかわからないを通り越して映像の暴力とか視覚へのダイレクトアタック以外のなにものでもないと思うッ。


「むしろ、これが正解だった思っていただければ幸いだッ」


 そんなことよりも、問題はこの後である。そう、ここはあのおっぱいお化けの部屋のベランダに当たる。いつ何時あの高笑いを引っ提げておっぱいお化けが現れてもおかしくない場所なのだッ。


「光の速さで退散せねばッ」


 もちろん、そんな速度は魔法で強化しても無理だが、気分的な問題である。こう、一刻も早く立ち去りたい気持ちがさせたことだと思っていただきたいッ。


「それに今なら最強主人公ちゃんもまだいるかもし」

「おーっほっほっほっほっほっほ」


 言葉の途中で何か聞こえたが、うん、きっと慌てん坊のセミさんとかきっとそういうものだろうッ。


「あ」


 急いで立ち去ろうとし、ふと思い至る。下着泥棒はどうすべきかと。


「っ、やむを得んッ!」


 人間生活の短いおっぱいお化けでは丸め込まれる可能性も否めない。慌てて倒れたままの下着窃盗犯へ手を伸ばし、襟首辺りを掴んで魔法によって透明化するッ。


「あら? さっき誰かいたような気がしたのだけれど……」


 おっぱいお化けが現れたのは、姿を消し終えた直後。本当にぎりぎりセーフであったッ。


「どーちまちて、おおきいわたくし?」

「おーっほっほっほっほっほ、何でもなくてよ」


 息をひそめていると幼女の方の声も聞こえ、やり取りの感じだと気のせいと思ってくれたらしいッ。


「まったく、心臓に悪いと言わざるを得ないッ」


 例の索敵魔法による脳内地図でおっぱいお化けと思しき反応がベランダから遠ざかるのを確認して俺は安堵の息をつくとその場を離れたッ。


「がっ」


 だの。


「ごべっ」


 だのと音がしたが、透明になって見えないがゆえに壁とかへ下着泥棒をぶつけてしまったのかもしれないが、性犯罪者へ配慮する必要はなかろうッ。


「敢て言っておこうッ! 八つ当たりでわざとぶつけたとかそういうことは……あるッ!」


 こんなモノもって最強主人公ちゃんへ会いにゆくわけにもいかない。つまり機会をつぶされたのだッ。だから少しぐらいの八つ当たりはきっと許されるッ。


「とは言えコイツをこのままにもしておけんしなッ」


 ひとまず、ましゅ・がいあーから戻ってこの下着泥棒は警備の兵にでも突き出そう。姿を見せる前に昏倒させたから問題はない筈ッ。


「そうと決まれば話は早いッ」


 俺は再び着替えのために屋根へと上がるのだったッ。




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