第104話「舞い降りる変質者」
「ましゅ・がいあーッ!」
野郎の着替え何てどこにも需要はないだろうしとさっさと着替え、俺はポーズをとったッ。そう、ここからの俺は、特別魔法教官ではなく、覆面と下着だけな半裸の変な人こと、ましゅ・がいあーなのだッ。
「変身が終わったなら、接触せねばなるまいッ」
問題はそのアプローチ方法だッ。初対面ではないが、いきなり登場して驚かせ、悲鳴でも上げられたらアウトだッ。最強主人公ちゃんも人目をはばかっている筈なので、待っているのは両者にとって不本意な結果であろうッ。
「驚かせない程度の距離から、出来ればあちらに先に発見させるのがベストかッ」
そしてこちらも気づき、顔見知りなので軽く片手でも上げて挨拶してから話を切り出す。
「奇遇だなッ! 見たところわけありの様だッ! このましゅ・がいあーで良ければ話を聞こうッ!」
だいたいこんな感じだろうか。
「ふむ、決まったなら行動あるのみッ」
兵は拙速を尊ぶ。どこかの兵法書にそう書いてあった気がする。ましゅ・がいあーは兵と言うにはいろいろあれではあるが、まぁまごついてるより拙い考えだろうとさっさとやれと言うことであろうッ。
「考え過ぎてドツボにはまるのが、どこかの特別魔法教官の残念ポイントなのだッ」
自分で言っていれば世話はないが、そこは適当な棚にあげると言わず放り投げ込んでおく。
「よしッ、目撃者はいないなッ」
屋根の上から最強主人公ちゃんの位置を確認、周囲に通行人などがいないのも確認し。
「ひらりと降り……ん?」
降りるだけになって気づく。視界の端、職員用の寮のベランダに不審な人影があることを。
「おのれ、作者めッ!」
十中八九、下着泥棒とかであろうッ。このタイミングでなんてベタな展開を持ってくるのだ。
「阻止をすれば、騒ぎになって最強主人公ちゃんは立ち去ってしまうだろうッ! つまり、接触の機会が水泡に帰すッ」
だが放置すれば、あのベランダがある部屋の主が下着泥棒の被害に。
「くッ、ましゅ・がいあーは正義の人ッ」
見て見ぬふりなど、ありえないッ。
「と言うか、あの部屋は――」
よく見れば、妙に見覚えがあったッ。そう、昨日入居の支度のお手伝いに行った場所の様な。
「って、おっぱいお化けのとこじゃねーかっ!」
思わずキャラすら崩壊させてツッコミを入れてしまったが、俺は悪くない。
「一般の教員が被害に遭うよりはまあ良かったかもしれないが……」
あのおっぱいお化けはつい先日まで獣だったのだッ、下着を盗まれたから傷つくというようなことはあるまいッ。
「だが、犯人が味を占めて罪を重ねる可能性、そして無くなった下着を買いにゆくため買い物に付き合わされる可能性ッ」
放置できない理由は複数。されど、何より重要なのは。
「この俺が悪事を見逃せないということだッ、とうッ!」
バカなことをしているとは思うッ。思いながらも俺は飛び、魔法で滑空するとそのままこちらへまだ気づかぬ推定下着泥棒へと飛び掛かったのだったッ。
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