第101話「タイミングの悪さにも意図を感じてしまう帰宅後」*

「うーん」


 無事おっぱいお化け達の入居準備の手伝いを終えた俺は、教え子たちと別れ自身にあてがわれた寮の部屋に戻ってきて唸っていた。何気なく確認して新しいコメントが増えてることに気づき、拝読させていただいたのだ。


『スーさんへ。 最強主人公ちゃんに「大事な事は勘違いが無いように事実確認を怠らないように」と、伝えてあげてください』


 つまり、この助言が正しければ、最強主人公ちゃんは現在何らかの勘違いをしているということになる。


「タイミングからしてあの入居準備の件が発端だろうな」


 そしてわざわざこう伝えてくださっているからには、勘違いを解かなければならない理由もあってのことだと思う。


「しかし、勘違いとは言うが――」


 最強主人公ちゃんは何を勘違いしているのだろう。


「俺があの時拾った本を実際に落とした……と勘違いしているのはあり得ないとして、ならば何だ?」


 本を落としたのが自分だと言い張った理由が、最強主人公ちゃんを庇う為と言う誤解ならあり得るが、わざわざコメントで伝言すべきなんて忠告はくださらないだろう。


「そのまま誤解させておいては問題のある勘違いの筈。ふーむ」


 考えれば、一応これではないかと言う心当たりは思い浮かぶ。


「一つは、俺が本を落としたのは自分だと言い張った理由について『単純にあの本が欲しかった』と誤解した可能性」


 性教育の本となれば、当然の様に裸の男女の挿絵がある。そんな本をわざわざ教官である俺が欲しかった理由。


「『えっちな本の代用品として欲しかった』とかそういう誤解のされ方をしてると?」


 これなら忠告の説明がつく。密かに匿名で最強主人公ちゃんがお礼としてえっちな本を送ってくるなんて事態を想像し、俺の頬は引きつった。


「もう一つは、俺が下着を隠したところを目撃されてて特別魔法教官は『下着が大好きな変態さん』と認識されてるってパターンか」


 この場合、送られてくるのが下着に変わるだけである。


「どっちにしろそれが第三者に露見したら、社会的に俺が終了するな」


 そりゃ、忠告もいただくはずだ。


「だが、最強主人公ちゃんの誤解を解こうにも、誤解の内容について触れて『本の方だと思ったら、下着の勘違いが正解でした』なんてミスをやらかしたら目も当てられない」


 逆に下着だと思ったら本の方が正解だった場合も、また然り。


「つまり、何らかの方法でそこをはっきりさせないと拙いか」


 となると、透明化した上でストーカーよろしく尾行して確認するしかないのだろうか。


「しかし、こう、ストーキングを実行に移した場合、何らかの事故で透明化がいきなり解けてピンチに陥る未来が安易に予想できるのだが……」


 ひょっとして、作者は俺が探りを入れに動くことまで予想済みなのだろうか。


「とは言え、な」


 頂いた忠告を無視することも出来ない。俺は部屋の壁を見つめてため息をついた。








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