第83話「いざ大空へ」

「確認とお礼でしてよ?」


 元竜は言う。ここまで来る途中の人間の雄の反応を見るに、人間の雄は雌の胸に興味を抱くことが解かった、と。


「『興味があるなら、接触したり触らせたらどう反応するのか』が気になったのが一つ、そして同様に興味を持つのであれば――」


 俺にはお世話になってるので、自分の胸を好きにしてくれてもよろしくてよともおっぱいお化けは言う。


「悪いがその礼は受け取れん。それは人間では番と生んだ子にのみ許される権利だ。それを商売としている一部の例外を除けばな」


 恐るべし観察力だと戦慄すべきか、もっとコイツに人間の常識を教え込んでおかないとと思うべきか。いや、きっと両方だろう。


「そういう訳なのでな、さっさと離れてもらおうか」


 飛び立つことを鑑みて人気のない場所に移動してはいるかが、万が一と言うこともある。この背中に胸を押し当てられた状況はいろいろ拙かった。


「それともこのまま背負って飛べという訳ではあるまいな?」


 なんて問いは投げない。首を縦に振られたら盛大な自爆になるから。


「そしてこれにぶら下がると良い」


 言いつつ差し出したのは、先日幼女を触れずに運ぶために即席で作った吊り下げる足場をこのおっぱいお化けのサイズに調整したモノ。備えあらば憂いなしと言うか、こうして移動することがあらかじめ分かっていたから用意したモノでもある。


「あとはどこへ行って何を見るかだが……とりあえず、公爵の館か」


 あの公爵家のバカ息子ならこういう場合のテンプレとして俺を逆恨みしていても不思議はない。敵対者カテゴリーに振り分けられるなら、索敵用の魔法で発見できる可能性はあるし、駄目なら一時的に元竜たちを隠して聞き込みをすればいいだけの事。短時間、聞き込みの為に近くを離れることとどこかに隠れてもらうぐらいの事なら、おっぱいお化けたちだって聞き分けてくれるだろう。


「確信があるわけじゃないしな」


 ちらっと寄って、何事もなさそうならさっさと王都に向かうだけだ。


「あそこには教え子も何人かいる、事件が起こりそうな要素は件のバカ息子以外なさそうな気もするが」


 想定外の事態で痛い目を見た俺は欠片も油断する気はない。


「準備出来ましてよ」

「まちてよ」

「よかろう、行くぞ」


 俺が離れてぶら下がるまでは出発しないつもりであることを悟ったのか、身体から離れた元竜が幼女と共にぶら下がったのを確認すると、俺は空に向かって飛び立った。


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