第82話「背負うもの」
「正気か?」
そう問われたら、生憎となと皮肉げに答えたことだろう。
「女装」
そう、女装である。精神面をガリガリ削られることは容易に想像ができるが、おっぱいお化けとの結婚エンドを防ぐには他に方策も思いつかなかったのだ。最悪の結末を免れる代償だと思えば、許容範囲だと思いたい。
「これで、問題は解決したな」
女装した自分のキャラクターについて口調やらなんやらを詰める必要はあるが、それは王都からの帰り道にでも考えれば事足りる。女装用の衣装も王都で魔法を使って変身して見た目をごまかしたうえで購入すればいいだろう。後回しにしたとかそういうんじゃない。
「では、俺はこれで」
校長の前から退出し、おっぱいを化けを連れたまま顔合わせするのは避けたかったので副教官のドロシーに書置きを残して、士官学校を出発するための準備へと移る。まぁ、準備と言っても登城用に服を着替えたり念のために報告書をしたためたりするぐらいなので、それほど時間はかからない。
「竜に関しては先に報告を送って、許可が出れば場内につれてゆくという形だろうな」
さすがに無許可でアレを王城に連れ込むのは拙い。今度は幼女の方もつれてゆくわけにはいかないがとりあえず落ち着き先として士官学校の職員寮は確保できたのだ。あれを材料にすれば、説得は可能だと思っている。
「さてと、あとはどこかの公爵の馬鹿息子、か」
追い出したのだからこの士官学校に居るはずもなく、普通に考えるなら親の領地へと帰っている筈だが。
「ノワン公爵領……ついでに寄れる位置にあるとこう、何か意図的なモノを感じてしまうな」
気のせいだと思いたいが、あのコメントのあとだ。警戒するに越したことはない。
「できればあそこに仕官した教え子たちから話を聞きたいのだがな」
それをすると、おっぱいお化けを連れているところを見られてしまう。士官学校に来るまでであれば、寮に住むわけだし、そのために案内してきたと言い訳もできるだろうが、ここからは同じ言い訳は通用しない。
「宿に呼び出してコイツらには部屋にいてもらうということも不可能ではないものの、宿の従業員には出入りするところを見られてしまう訳だしな」
目撃を避けたいなら、没案にせざるをえず。
「聞き込みは次回で良いか」
落ち着き先を作ってやれば、元竜とて毎回俺についてくることはなかろう。
「そうと決まれば、ノワン公爵領経由で王都に向かうとしよう」
移動は当然ながら魔法による飛翔だ。校長の気遣いはありがたいが、このおっぱいお化けを連れて馬での行軍は出来れば避けたかったのだ。
「馬に揺られる=おっぱいが荒ぶりまくる」
これぐらいの結果は俺でも想像するのは難くない。
「そんなモノが通りかかったら、二度見するな、普通」
男の悲しい性とかではなく、女性でも二度見するのではないだろうか。
「そも、見た目以前の問題もある」
元竜の身体的な負担が。
「故に飛びながら王都に向かうぞ」
「おーっほっほっほっほ、お気遣い感謝してよ」
本当にお礼言ってるのと問いたくなるような感謝の言葉ではあるが、敢てそれには触れず。
「何をしている?」
俺の背におっぱいを押し付けてくる元竜へと俺は尋ねた。
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