第81話「前回までのあらすじ」
「俺の名はスーザン。転生者であり、所有する『コメントを閲覧する能力』によってこの世界が誰かの創作物だと知るに至った男だ」
前世の知識を活かしてあちらの創作物にあった魔法をこちらで再現することで評価され、魔法作成者の異名を持ち現在は士官学校で特別教官として生徒に魔法を教えつつ厄介事を押し付けられては解決するという日々を送っていた。そんなある日、隣国で大国をも単独で滅ぼす脅威『竜』の存在が確認され、これに備えて俺は国境へと送り出されることとなったのだが、出会った竜は人に敵意を持たず、それどころか俺の強さに興味を持ち番として子をなしたいと言い出す始末。
「番になる相手を用意してやるから」
と説得し、人と子をなせる人型の姿になった竜とその一部である幼女を連れて帰還したところ、待っていたのはその竜たちと一つ屋根の下で暮らしてねと言う指示だった。
「番回避の意味ないじゃん! はたから見たらどう見ても子供が居る夫婦にしか見えない生活環境じゃん!」
全力でそう主張したい状況に置かれた俺は、顔を引きつらせたのだった。
「って」
現実逃避にここまでのあらすじを脳内で語ったところで、何の解決にもならない。なぜ俺がこんな目に遭うのだろうか。
「これは、あれか」
番を他者に押し付けようとした報いなのだろうか。陛下に報告して士官学校に戻ってきた俺はあてがわれた寮で夜を迎えて、そこにダブルベッドしか用意されていない現実に直面し、過ちを犯してしまう、とか。
「いやいやいや」
ない。こっちから手を出すのはない。だが、あちらから襲いかかってくる可能性は、ないとは言い切れない。
「その辺りを回避できたとしても、俺は――」
おっぱいお化けと幼女と同じ寮の部屋で暮らすことになる。第三者がそれをどう見るかは明白であった。元々同じ個体だけあって、元竜と幼女はよく似ている。親子と言われれば疑う者も居ない組み合わせで髪色は俺に近く。
「特別魔法教官が愛人と隠し子を連れて来た」
なんて誤解が生じるのではないかと俺にだって予想できてしまう状況である。
「シャレにならんぞ」
もし、そんな誤解が広まろうモノなら、元竜の番を用意する難易度が跳ねあがる。跳ねあがるどころか、話を持って行っても、もう俺と言う相手が居るからいいじゃないと断られかねない。行き着く先は、俺が責任をとってこのおっぱいお化けの番となる結末しか残されておらず。
「校長、一つお願いが」
俺は申し出た。寮の同じ部屋で暮らすのは構わないが、別人に変装させてほしいと。
「変装?」
「はい」
元竜の髪色が俺に近しいからこそ可能な世を忍ぶ仮の姿。
「この竜の姉妹へ変装したいのです」
これなら俺が番候補を遠ざける原因とならずに済む。その代り女装しなくてはならないというぢごくが待ち受けているが、竜の番になるよりはマシだろう。
「それは、どうしてもしなくてはいけないことかね?」
「はい」
困惑した様子の校長へ俺は即座に頷いた。
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