第80話「私が校長です」*
士官学校は勝手知ったる己の職場。迷うことなく最短距離で職員室へと向かうと、帰還した旨を伝え、校長の所在を尋ねたのが、少し前の事。生憎来客中との事で来客への応対が終わるまで待つこととなったのだが、報告の内容が内容だけに校長と会うことも他者に知られるのは憚られ、普通ならあり得ないことだが、校長室の中で待たせてもらうことにして、暫し。
「スーザン特別教官、待たせたね」
俺たちより後に校長室へ入ってきた初老の男に俺はいえとだけ言って軽く頭を振る。頭頂部の毛髪はやや薄く白髪の混じった灰色の髪をしたその男こそが俺の上司であり、この士官学校の校長だった。
「この後で陛下にも報告に行くのだろう? 君には不要かもしれないが足の速い馬を用意させてもらった」
「お気遣いありがとうございます」
「なに、君が果たしてくれた任務に比べれば大したことはないよ」
俺が頭を下げると校長は微笑で応え。
「一時的に君の部下となっていた卒業生たちからある程度話は聞いている。が、それよりもまず、そちらの御嬢さん方を紹介してもらっても良いかな?」
自身のモノである革張りの椅子の方へと歩きつつふいに足を止めた校長が視線を向けた先に居たのは、当然のことながらおっぱいお化けと幼女だった。
「それなのですが……」
どのタイミングでか、尋ねられるのはわかっていた。だからこそ待っている間に考えもしたのだが、校長にショックを与えず説明するすべは思いつかず。コメントに頼ろうと寄せられたコメントの有無を確認したところ、増えていたコメントは二つ。
「誤字については作者に詫びさせて、直るのを待つしかないが」
もう一つのコメントは、俺も忘れかけていた最強主人公ちゃんが宝玉に触った時の反応で言いがかりをつけていたどこかの公爵のバカ息子についてのモノ。
『ちょいと反省して、気のいいスットコドッコイ要員になる展開も大好物でーす!』
とのことだが、俺はあれっきり会っていない。ただ、このコメントを拝見した作者が何らかの干渉をして覚醒する展開が起こることも十分考えられる。一応覚えておくべきだろう。
「そういう訳で――」
結局のところ、上手い説明と言うのは思いつかなかったというのが、俺が校長待ちの時間を使い切った結果だ。故に今言葉に迷っている訳なのだが。
「話は長くなりますが……」
そう前置きして、俺は説明を始めた。
「――
前もって決めた設定どおりに話すことは、出来ていたと思う。
「なるほど」
そして予想とは違い、校長は卒倒することなく頷いた。こう、なんだか目がものすごく遠くを見ているような気はするが、介抱するような羽目にならなくてよかったとも思う。思うのだが。
「職員用の寮に家族で住める部屋がいくつもある。その一つを君たちで使いたまえ」
「え゛」
「人となった竜の存在など余所には明かせないだろう? そして見た目は小さな女の子と女性だ。もう一人男性を加え、親子と言うことにすればある程度人の目は誤魔化せるだろう」
「たしか に ごまかせる かも しれませんけど」
俺の顔は明らかに引きつっていた。
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