第74話「発言の真意」
「で、先ほどの話だが」
さすがにその場で内容を問いただすわけにはいかず、しっかり話を聞くことが出来たのは、関所の最高責任者の前を辞した後だった。
「だから、わたくちをくだしたちからをみせれば、それでじゅうぶんともうしておりますわ」
「力を見せる、か」
幼女曰く、手合せした時の実力を披露すれば竜の実力を人間がどれぐらい認識しているのかは、わからないがその力を前にして騙りだのとケチをつけられるものは居ないのではないかと言うことらしい。
「脳筋な考え方だが、一理はあるか」
「それでもだめなら、わたくちがりゅうであるとあかせばよくてよ」
人間が人間の都合で竜に生活圏へ踏み入れられたくないようだったから、軍門に下したましゅ・がいあーの命で人の姿に変わっているのだと真実を明かしてしまえばいいと元竜の一部の幼女は言う。
「もとのすがたにもどったら、あちこちこわちてしまうけれど、それでもりゅうのすがたがみたくて?」
それでも尚疑ってくるなら、そう被害が出ることを匂わせれば首を縦に振る人間はなかなかいないのではなくてとも幼女は述べた。
「なるほどな。その場合、力を見せたましゅ・がいあーも畏怖されることになりそうな気がするが……」
現状俺に代案はない。
「となると、後は隣国の姫君と香草の件で話し合うことと……お前の服を手に入れることぐらいか」
服を手に入れるアテについては先ほど心当たりが出来た。
「迷子を保護した。着の身着のままで着替えがないらしいので子供用の服が手に入りそうな最寄りの村があれば教えてほしい」
と言う名目で、責任者から幼女用の服が手に入りそうな場所も聞き出しておいたのだ。
「もっとも、『親探しを手伝おうか』と申し出られたときには少々焦ったがな」
そちらも忙しいだろうから、流石に手は借りられないと断ったものの、危ないところだった。
「伝令が出るなら教え子たちの事は後回しでも良いとして――」
幼女の服についても後だ。それより先にもう一人会わなければいけない人物が居るのだから。
「逆に言うなら、その一人との会談でおおよそが終わる」
報告だとか竜の本体を迎えに行くと言ったことは残っているものの、ようやく士官学校へと帰るめどが立つのだ。
「思えば、長かった」
こっちに来るかどうかわからない竜にヤキモキさせられつつ国境線にくぎ付けと言う可能性は恐らくなかったと思うが、士官学校を出発した時は流石にこんな展開になるとは予想だにしていなかった。
「帰ったら帰ったで手続きと報告に忙殺されそうな気もするが――」
その先に平穏があると信じたい。
「さて、行くとするか。隣国の姫君の元へと」
希望が見えてくると足取りは自然と軽くなる。そんなことを実感しつつ、やがて俺はたどり着く。
「お待ちしていました」
出立の準備を進めている侍女やお付の騎士の向こう、出迎えの言葉をくれた人物の元に。
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