第73話「衝撃の事実」
「は?」
俺は耳を疑った。
「救国の英雄……」
それはわかる。事実面だけをとらえたなら、竜の脅威から国を救ったのだから。だが、どう見ても変態だと言うのに難民にはかなり好意的に受け入れられた、らしい。何でもあの時言葉を交わした隣国の姫君がやたらましゅ・がいあーを持ち上げたのだそうだ。
「確かに国の危機を救ったのかもしれないが――」
見た目はただの変態だ。行動も変態っぽくした筈。そのマイナス面で功績面でのプラスをもっとうやむやにできると、俺は思っていた。
「っ」
誤算だ。大きすぎる誤算だ。
「しかし、それだけ好意的に受け止められているなら、偽物もでてくるやもな」
「可能性は否定できない。だが」
軍門に下した竜を連れて来てみろと言えば、騙りは退散するしかない筈と言われ。
「あ」
俺は固まる。
「その してき、されたら ほんもの も たいさん する しかないんですが」
とはさすがに言えない。竜の本体はもう人型への変化を始めてしまっているだろう。変身魔法を用いたり幻覚でごまかすという手段もあることにはあるが、実態と幻の体格差が大きくなってくると、偽装は難しい。
「アタリ判定詐欺」
とでも言おう状況が発生するからだ。幻に実体がないため、催眠などで触れる感覚をごまかしても無機物などにはその効果が及ばない。何らかの障害物のある場所で幻の竜を見せた場合、竜の身体が障害物、たとえば塀や壁などにあたった場合、倒壊させずすり抜けてしまうことになる。当然だが、インチキがバレ、そ下手をすれば、俺が軍門に下した竜まで幻の類のインチキだったということになりかねない。
「下手な小細工はするだけ無駄か」
「その通り」
騙りの立場に立ったという態での発言を装って呟けば、関所の最高責任者は首肯して見せ。俺は脳裏で頭を抱えた。少なくともあの姫君が疑うことはないと思うが、ましゅ・がいあーを騙りだと見て竜を連れて来いと言いだす輩はまず間違いなく居るだろう。そして追及されたときに竜を連れて来られないとなれば、どうなるか。
「むぅ」
こうなってくると、好意的に受け止められたことすら拙いことになってくる。好意が裏返れば強い敵意や憎しみとなる。ましゅ・がいあーだけなら変身するのをやめてしまえばそれで逃げることは可能だが、そうすると逃げた俺の分まであの姫君が叩かれることとなるだろう。平然と他人をスケープゴートに出来るような面の皮の厚さを俺は持ちあわせていない。救いがあるとすれば、伝令は出してくれることが確定したことだが。
「ん?」
「そうおもいなやむひつようなんて、ありまちぇんことよ」
膝に何かが触れたと思った直後、釣られてみた先で、幼女は胸を張って言った。
「ちからをみせればいいだけのことでつわ」
と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます