第67話「割り切らなきゃ」
「それよりも、だ」
ショックではあったものの、竜は竜。人間とは感性が違うのだろう。感傷は個人的なモノ、今は後回しにしなければならない。
「お前を俺の住む国で受け入れてもらうにあたり、色々せねばならんことがあるが、お前自身を連れていけば、この国でのこと同様、騒ぎになりかねん」
「つまり、どこかで待てと?」
「理解が早いな」
問題はそれをこの竜が受け入れてくれるかだが。
「それは、人間になってついていっては駄目ですの?」
「は?」
返ってきたのは、想定外の提案。
「前にも言ったように人間と子をなせる身体になれば、おそらく見た目も人間に近しいモノに変わる筈ですわ。そうしたら、ついていってはいけない理由は、ほぼなくなりましてよ」
「っ、それは確かに――だが、人に近しい姿となると、お前が竜だったと話して信用してもらえるかという問題が出てくるが……」
今までにしてきた色々なことで相応の信用は得ているとは思う。それでも実際の竜を見せずに人型になったこの竜を見せて信用してもらえるかと言うと流石に自信はなく。
「おーっほっほっほっほ、それはそれですわ。さっき使っていた魔法による変身とやらをわたくしが使えるようになればおおよその問題は解決するのでなくて?」
「むぅ」
言ってることには一考の余地がありそうだが、何だろうこの敗北感は。
「うまく行ったら竜は
「……それは不本意ですけれど、
「なる程、拘りはないということか」
しかも当竜が納得した上で申し出てくれたのだ。ある意味俺の為に竜の姿を捨てるというなら、こちらとしても相応に応じなくては駄目だろう。
「わかった。人の姿になったことで生じる不都合は俺の方で何とかしよう」
安請け合いかなとも思いはしたが、俺には時間がない。
「それで、人型になるというのは時間がかかるのか?」
「『はい』でもあり『いいえ』でもありますわね。短時間で身体の構造を一機に変えると身体への負担が大きくなりますわ」
「そうか」
言われてみればもっともなことだ。だが、ここで短時間を選んでくれとは流石に言えず。
「ですから、少々ずるをしますわ。今のこの身体の大きさならではの方法ですけれど、身体の一部を変質させて切り離します」
「は? 切り離す?」
「そもそもこの巨体、人間の身体の大きさに縮めることも身体への負担の一つですもの。重要で無い部分を切り捨てるのも一つの手。その斬り捨てる部分を変質させて再利用する……と言うことですわね」
「そっ」
そんなことができるのかと口から出そうになったが、出来るからこその申し出なのだろう。
「ただ、代わりに欲しいモノがありますの」
そう竜は言いつつ、俺を見た。なぜかこの時、嫌な予感がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます