第49話「困ったときにはコメントに頼ろう」*
「あわてるな、落ち着くんだッ!」
脳内で自分に言い聞かせる。頭を抱えたところで事態は好転しない。イメージではなく実際に頭を抱えたところで訝しがられ、理由を尋ねられて余計墓穴を掘るだけだ。こんな時こそ落ち着かなければならないし、俺にはまだコメント閲覧と言う奥の手があるッ。
「コメントが寄せられているのはわかっているッ、まだ万事休したわけではないッ」
そう声には出さず自分を鼓舞しつつ、心の中で読者に感謝するッ。
『よくいるよね。鋭いんだか鈍いんだかわからない人』
感謝した上で遠い目をしたのは、最初に目にしたのが、ちょっと前のコメントだったからだろう。全力で同意する。と言うか、その当人である関所の責任者は俺を見て返答を待っていたりするわけだけれどもッ。
『そんな人に限って実力者だったりするからたちが悪い……』
竜と違って手合せしたわけでもない、実力者かどうかはわからないが、かの人の提案は間違いなく俺にとってたちの悪いものであった。が、それはそれ。コメントはまだ一件残っているッ。
『解決方法は思いつかないので応援だけですが……どう切り抜けるのか楽しみにしています!!』
内容を一通り見た俺の表情は、ただ笑顔だったと思う。覆面をしてるので、きっとわからないと思うが、笑顔だったッ。何だろうこの気持ちは。
「待つということは時間があると見たッ、少し出かけてくるッ!」
俺は関所の責任者にそれだけ告げると、くるりと踵を返す。
「な、どこに」
「トイレだッ!」
たぶん世界一よく使われたであろう創作の人物がその場から離脱するための嘘を口にし、返答も待たず走り出すッ。
「学園ものなら仮病で保健室とかも定番の様な気がするが、どうでもいいッ」
とりあえず、自由の身にはなれた。これで姿を消して元の姿に戻れば、スーザンとしての俺は関所には到着できる。そうすると今度はましゅ・がいあーが居なくなるわけだが。
「トイレに席を外したが、場所を聞くのを忘れていたッ。戻って聞くのも恥ずかしいのでトイレを借りに最寄りの村まで飛んで行っていたのだッ」
今思いつく姿の見えない理由はこれぐらいである。
「ひとまず時間稼ぎは出来るが、両者が同じ場所に居ない問題は解決できない」
竜に力を借り、竜の姿をましゅ・がいあーにすればと思われる方もいらっしゃるかもしれないが、それには俺の本当の姿を明かした上で、いろいろ説明する必要があるッ。
「明らかに借りを作る形になる上、今度は竜が居なくなる」
結局のところ最終的な問題解決に至らないのだッ。
「思いつく限りで、残された手段はただ一つッ」
だが、それを行うのも俺としては躊躇われた。何故なら――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます