第43話「このままだとタイトル詐欺になりそうなので、竜の事件サッサと終われという切実な思い」
「返答はいかにッ?」
俺の要求に何とも言い難い表情をしつつも、関所の責任者は決断を下した。見届け人を出すという決断を。まぁ、この場所に竜がたどり着いて難民がパニックになった場合、手持ちの兵力で関所を封鎖し続けられるかと言う問題もあったからだろう。その辺りを抜きにしても、関所の前まで竜の接近を許すのと自分たちから足を運ぶのとでは状況が変わってくる。俺が騙されていたり嘘をついているという前提の場合、竜の接近を許してしまえば色々な意味で詰む。
「了解したッ!」
「では――」
そう筋肉を誇示するポーズで応じた俺に、責任者は言う。見届け人の選考や準備などに時間をもらいたいと。
「ぬッ」
迂闊だったと思うッ。急な話なのだ、言われてみれば準備の時間が欲しいというのは、もっともなことであり。だが、時間をかけすぎるとこちらから出向くどころか竜の方がここに到着してしまうッ。
「仕方ない、俺は一足先に失礼しようッ! 準備に時間がかかるというのはもっともなこと、だがそれを待っているだけでは時間の浪費。なら、その時間を利用して俺は場を整えるッ!」
イメージするのは記者会見の場。もちろんこっちの世界にマイクだのカメラだのは存在しないが、いかにも話し合いをしますというような場所を用意するッ。そんな場所に人間を前にして周囲に破壊をもたらさず竜がお行儀よくしていれば関所の人間も認めざるをえまいッ。普通の竜なら周囲の被害など考えず人間に襲い掛かる。先に場を整えてから竜を誘導してもそんな状況は作れない。
「準備が出来たら再び戻って来ようッ! 俺の名はましゅ・がいあーッ、再訪を約束せし男だッ!」
「待――」
待てと言う声が聞こえたような気もするが、待たないッ。俺としても竜がここまでたどり着いちゃうかと結構ハラハラドキドキの状態なのだ。
「間に合えよッ」
声には出さずそう呟く。これで振り返ったらもう竜が到着していましたと言うオチもありそうな気がしてしまうのは、俺がこの世界を創作物だと知っているからだろう。コメディならそのオチも充分に考えられる。
「ふぅ」
だから、制止の声を無視して駆け出してもすぐ竜が現れなかったことに少し安堵した。とりあえず合流したら関所であったことを話して、確認の場を整えつつ今後の方策を練るッ。
「大丈夫ッ、上手くいく」
登場して面倒なことになるのではと少しだけ考えていたあのお姫様も出てこなかったしちょっと強引だが話を打ち切って離脱することも出来たッ。よくよく考えるとあのお姫様が出てこなかったのは俺がこんな格好をしてるからかもしれないが、それならそれで結果オーライだ。
「おーっほっほっほっほ、あら?」
それからどれぐらい走っただろうか、俺は無事あの竜と再会したのだったッ。
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