第23話「お楽しみの時間(前)」


「うへへへへへっ、ひゃーっはっはっはっはっは、くく、くくく……さあ、楽しい楽しい尋問の時間だぁっ!」


 狂ったように笑ってから宣言し、違うなと俺は頭を振った。最強主人公ちゃんの元を去り、情報元を二名お持ち帰りした俺は考えていたッ。いかにして足元に転がる二人から情報を引き出すかということを。


「この『ましゅ・がいあー』は実のところ、最強主人公ちゃんが加勢してくれたから勝てたようなモノだッ!」


 こう、圧倒的な力でねじ伏せたとかならましゅ・がいあーの格好も山賊っぽい男たちへのプレッシャーになるかもしれないが、不意打ちで倒しただけのこの格好で怖がってくれるかと言う問題があるッ。


「それならもう一人尋問用のキャラを作った方が早いんじゃないの?」


 と言う発想に思い至ったが故に、今は尋問用のキャラを作成中と言う訳だッ。こう、何をするかわかんないような狂ったキャラと言うのが尋問用キャラのコンセプトなのだ、急に気が狂ったとか豹変したと言う訳ではない。


「むぅ……性格の全然違うキャラを複数、ど素人の俺が演じ分けようと思うこと自体が無謀なのかッ」


 情報を得るだけなら魔法による幻覚を使って自白させるとか言う方法もいくつかある。あるにはあるが、その魔法は他人には存在することすら知られることが憚られるモノ。悪用すれば口にするのも憚るようなことさえ可能であるが故に。


「あれはできれば最後の手段にしたいッ」


 行使したなら、その対象の口を永遠に封じなくてはならない。この男たちも捕まったら死罪になる程罪を重ねて来た可能性もあるが、万が一、千が一今回が初犯で未遂だとするならうちの国では死罪まではいかないのだ。


「運べないからと残りを置いてきてしまったこともあるッ」


 俺としては情報を吸い出し、男たちが初犯だったら、出来ればどこかの役所なり自警団の詰め所なりに突き出したいッ。置いてきた男たちが再び山賊家業を行おうとしても、一部の男が捕まっていれば、そこからこの辺りに山賊が居たという事実が伝わるからだ。


「もうすでに何度も悪事を働いていた場合?」


 その時は二人を処分して引き返し、残りの連中も息の根を止める。ただそれだけである。


「その前に他に仲間が居ないかを聞き出さねばなッ」


 先ほどは楽しいと嘯いたが、実質ここから先は苦痛の時間だ。男たちがやらかした胸糞の悪くなるような非道の数々を聞かされる可能性だってあるッ。


「やはり気が重いッ! 説明するまでもないが説明しておこうッ! 俺は憂鬱ッ! 故に少々大人気ない行為に出ようとしているッ!」


 放つのは、風の刃を使った切断魔法。狙いは、大きめの木の幹。


「八つ当たりスラァァァァァァァッシュ!」


 風の刃が通り過ぎ、切断面から上がずり落ち始めるッ。


「むうッ、たいして気が晴れないッ」


 だが、これで木材が手に入った。


「さてッ、これでとりあえず拷問具を作ろうッ!」


 キャラで脅せないなら、小細工でカバーだッ。


「しかし、拷問具かッ」


 鋼鉄の処女は文字通り鋼鉄製、なら木材では不適当。


「木、木、木……三角木馬?」


 他に思い当たる拷問具がなかった俺は、こうして三角木馬の製作に取りかかることとなったのだった。

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