第15話「異物混入って聞くと対象商品が家の中にないか確認しちゃうよね?」*
「そうだ、コメントが来ていないか確認してみよう」
と、声に出したわけではないが、俺は意識を自分の内部に向けた。安易に他人に頼りすぎと笑わば笑え。今の俺は割といっぱいいっぱいなのだ。
「っ」
そして俺は新しいコメントが来ていたことに気付く。ついこの間まで死に能力だっただけに、コメントがあると嬉しくて仕方ない。だが、今は良い案がなくて困っている状況だ。感傷に浸っている場合じゃない、だからさっそく拝見させていただこう。
「さて――」
内容を確認しだして、一行目で口元が引きつった。紛れ込んでるのが主人公じゃなかったら驚愕の展開ですねとあったのだが、正直俺もそうなんじゃないかなとは思ってた。何せ、最強主人公ちゃんは主人公なのだ。試験から二日、普通に考えると出発時、校門の前に居る理由が見つからないのだが。
「主人公だから紛れ込んじゃいました」
とか言われたら謎の説得力に勝てる気がしない。あの何とかって公爵家のバカ息子が抗議に来ていて間違われたと言う展開は性別的にあり得ないだろうし、息子はさておき、親の方はまともなら俺の前に姿を現すようなことはさせないだろう、先日の今日で。
「しかし、な」
万が一主人公ちゃんだった場合、まだ入学すらしていない未熟な状況の時に竜と遭遇、戦う術もなく、庇った俺がこの世界からフェードアウトって可能性もゼロではない気がするんですが。まだ最強主人公ちゃんには魔法の一つも教えて居ないし。
「いや」
ひょっとすると、この後紛れ込みに気づいた俺が簡単な魔法を護身用に教えて、極限状態で才能が開花、俺の死を乗り越えて竜を撃破するという流れなのだろうか。
「いかんいかん」
どうにも悪い方向へ悪い方向へ想像してしまう。とりあえず、これは保留して先を読もう。何々、俺をどう呼べば良いか、か。そういえば特別魔法教官と呼ばれてばかりで今世の名を最近呼ばれていない気がする。これは作者が考えるのが面倒でわざとやってるのか、それとも何かの伏線なのか。まぁ、登場人物である俺に知るすべはないし、この辺りで自己紹介するのも悪くないか。
「俺の名は、スーザン。スーザン・ノウンオウル。呼びにくければ、スーザンでもスーさんでも好きに呼んでくれ」
そう声には出さず、心の中で言葉にする。唐突に知ってる相手が自己紹介なんてし出したら、正気かを疑われかねない。時々正気を失ってどこかに逃げ出したくもなるけど、それとこれとは話が別である。そも、コメントにはアドバイスも含まれていたのだ。ありがとうと声には出さず感謝の言葉を紡ぐ。
「特別魔法教官?」
「確認したい事が出来た。ここは頼む」
訝しむ教え子にそう告げて俺は馬首を返す。確かにこの口実なら不自然はない。馬車の中を確認するのは怖い。ちょっとどころではなく怖いけど、いつかは確認せねばならないことだ。俺は馬を進め、馬車へと近づいた。
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