第4話「主人公は○だったので」
どうすればいいのだろう。縋るように特殊能力を使って、俺は感想を閲覧した。
「っ」
感想は一件もなかった。今のところこの能力はなんの救いにもなっていない。安易に他者に助けを求めようとした罰なのだろうか。それともこの世界が感想に値しないほどつまらないのだろうか。いや、目の前の少女が主人公だとするなら、話としては始まって間もないから感想がないだけか。いずれにしても、この状況を自分だけの力でどうにかしなくてはならないようだった。
「あの」
少女が俺に声をかける。いや、まぁ、当然だろう。中途半端に言葉を止めてそこからだんまりなのだから。だがしかし、下手な受け答えをしては不味い。俺はあくまで踏み台転生者を目指す予定の男だ。馴れ合うわけにはいかない。
「なんだ?」
あくまである程度突き放すように冷たく、最強主人公ちゃんに視線を向け、問う。頭の中はまだ混乱中ではあるが、醜態をさらすのは対決で無様に負けてからである。
「その宝玉に異常がないかを調べるために来られたのですよね?」
「ああ」
そうだ、そうだった。想定外の事態で頭から飛んでいたが、それがあった。宝玉を調べている間は時間が稼げる。その間に何としてもこの場をうまく切り抜ける方法を思いつかねば。
「さて、では調査を始めるとするか」
ぶっちゃけ、宝玉に異常があるなどとは思っていない。もちろん調べるフリをして後で異常が見つかったら問題ではあるからちゃんと調べはするが。
「ふむ」
しかし、想定外にもほどがある。まさか最強主人公が女とは。これでは最強主人公がチートでハーレムをと言う展開はまずあり得ないとみていいだろう。実は同性が好みでしたとかいうどんでん返しでもない限り。
「特別魔法教官、どうでしょう?」
「そうだな。まぁ、無いとみていいだろう」
だが、そうなってくるとハーレムではなく逆ハーレムとやらを形成する可能性があるのではないだろうか。
「っ」
「特別魔法教官?」
待てよ、と言うことは、だ。と言うことは、俺にそっちの方面で最強主人公ちゃんが手を伸ばしてくることもあるのではないだろうか。
「まずいな」
俺は逆ハーとかそう言うのには詳しくない。うっかり逆ハーとやらの一員となってしまったらどうすればいい。踏み台転生者との両立は可能なのか。
「いや、そうじゃない」
「特別魔法教官?」
問題はそこじゃない。そもそも俺は二股三股をかけるような異性はごめんだ。となれば、予防線というモノをはっておく必要も――。
「そうだな。よし……」
方針は定まった。あとは顔を上げて宝玉に異常がなかった旨を告げればいい。それだけの筈だというのに。
「っ」
顔を上げるとなぜか俺へと周囲の視線が集中していた。
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