1095 DAYS
勇今砂英
1095 DAYS
DAY 1.
「おはよ!」
「お、おうおはよう。あんた誰?」
——君は愛想が無かったよね。
「私、
「おう。」
「君は、私に恋するかもね。」
「え?」
「言ってみただけだよ。」
「・・・自意識過剰。」
「ハァ!?」
DAY 365.
「うわーなんだか緊張?するねぇ。」
——心臓が飛び出しそう。気が動転しまくってる。死ぬほど嬉しい。
「そうだな。うん。なんか変な感じだ。」
——
「これから、よろしくな。」舜が言った。
「・・・はい。ふつつかモノですが。」
二人の恋人としての日々が始まった。
DAY 395.
「ちょっと、信じられないんですけど。」
「ホンっとゴメン。まじゴメン。ゴメンゴメンゴメン。」
「許さぬ。」
「だってさー、1ヶ月?記念日?そういうのって重要?」
「重要に決まってんじゃん!超重要!あんた、それほっぽってまさかのゲーム?」
「だってさ、今日配信だったんだって。DLCイベ。」
「一生ゲームしてれば?」
「あーだからゴメンって。埋め合わせにさ、今度の日曜あそこ連れてくよ。」
「んー。そんなんで私の機嫌とろうったって・・・」
「お願い。」
「・・・キスしてくれたら許す。」
DAY 549.
「あのさー舜。」
「んー?」
「体育祭の時一緒にいたの、誰?」
「びっ!?」
「びっ!?てなんだよ。怪しい。」
「いや、なんでもないよ。なんでもない。なんでもなーい。
・・・そんな目で見るなよ。」
「・・・殺す。」
DAY 730.
「俺を褒めてくれよ。」
「すーぐ調子に乗るんだから。1ヶ月の時の罪はそのままだかんね。」
「え、だってあの時は許したじゃん。」
「まあいいや。で、今日は何するの?」
「・・・美亜。」
「な、なによ急に。」
「俺、お前のこと、絶対幸せにするから。
これ、貰ってくれ。」
「え、これって・・・?」
「指輪は無理だったからさ。ケーザイ的に。石もなんも付いてないけど、ネックレス。」
「・・・ありがと。うれしい。」
「お、おい、泣く事ないだろ。おい・・・」
「大好き。」
DAY 845.
「なんだよ大事な話って。」
「ちょっと言いにくいんだけど。」
「なんでも言ってくれよ。俺なら大丈夫だから。」
「・・・できたみたい。」
「え、まさか、それって・・・。」
「舜の・・・赤ちゃん。」
「まじか。・・・すげえな。」
「え?」
「いや、半端ねぇよ。赤ちゃん、俺とお前とで、すげえじゃん。」
「アホなの?私たちまだ高校生だよ?」
「アホとはなんだ。関係ねーよ。ってか、喜ぼうぜ。」
「喜んで・・・くれるの?」
「当たり前じゃん。超絶嬉しい!」
「・・・バカ。」
「やったぜ!バンザイだ!ほれ、お前も。」
「やめて。恥ずかしいから。ふふっ」
DAY 900.
「どうしたの話って。」
「うん。えっとな、・・・俺、学校やめて働くことにしたわ。」
「え、だめだよ。ちゃんと卒業して、それからの方が働き口だって探しやすいでしょ。」
「いやさ、俺の親父の知り合いがやってる建築会社が雇ってくれるそうなんだわ。人手不足だから今すぐにでも雇えるっていうからさ。それに甘えさせてもらおうと思って。」
「もう、決めちゃったの?」
「おう。いつも事後ホーコクでごめん。」
「舜が後悔しないならいいよ。」
「それに早くちゃんとした形になりたいじゃん?それには金がいるからさ。」
「ちゃんとした形?」
「だからさ。ケッ・・・だからその時にちゃんとプロポーズするから!」
「今プロポーズって」
「わーわーわー!今のナシ!」
「ぷぷっ」
——でも、舜が私にプロポーズする日はこなかった。
DAY 935.
「美亜、あなたしっかりなさい。お母さんになるんでしょ?ちゃんと栄養もとらなきゃお腹の赤ちゃんに何かあったらどうするの!」
「だって、ママ。私・・・舜のいない人生なんて・・・耐えられないよ。」
「いつまでも泣いてちゃ駄目よ。あなたは、大事な舜くんの命を受け継いでるんだから。」
「舜の・・・命。」
DAY 1095.
「がんばって!もう少し!ほら!もっといきんで!」
——おぎゃあと元気のいい声をあげてあなたが生まれた。
「おめでとうございます!元気な女の子ですよ!」
「ああ。私・・・お母さんになったのね。」
「おめでとう。おめでとう。美亜。」
「もう泣かないでよママ。」
——あなたに会えた。
DAY 10950.
「・・・んん。」
「あら、お母さん、目覚めたの?」
「ああ、
「うん。どうだった?」
「素敵な3年間だったわ。」
「私もお父さんに会いたかったな。」
「そうね。あなたにも会わせてあげたかったわ。でも会うと幻滅しちゃうかも。とってもバカなんだから・・・。」
「お母さん。私。お母さんの娘で良かったよ。」
「私もよ・・・しっかり生きるのよ。絢・・・。」
「あ・・・お母さん、お母さん!」
=☆=☆=☆
DAY 10925.
「母はもう長くないのですか?」
「申し訳ありません。我々も全力は尽くしたのですが。もうこれ以上治療を続ける事はお母様の負担をいたずらに増やすだけです。」
「何かできる事はないのですか?せめて母が安らかに逝けるような。」
「ひとつ、お勧めしたいものがあります。この装置は終末期の患者用にその苦しみから解放する物として、過去の記憶を夢に見せるという物なのですが。ヒュプノスという器械です。最大で3年間分の日々を再構築できます。」
「お母さん、最後の夢は決まった?」
「うん。ありがとう。絢。お母さんね、お父さんともう一度会ってくるわ。それでね。あなたにもう一度・・・。」
Re: DAY 1.
「あ!おはよう!舜!」
「え?あんた誰?」
「あ、ああ。知らないよね。私、美亜。よろしくね!」
「あ、うん。よろしく。なんだこいつ。」
「声に出てるよ。」
「あーごめん。で、なんの用なの?」
「冷たいなぁ。舜くん。いいかね。君は私に恋するのだよ。」
「え?」
「いいから。ね。今度こそ3人で3周年、迎えよう、ね!」
1095 DAYS 勇今砂英 @Imperi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
未練の墓/勇今砂英
★13 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます