第5話 開運探偵の邂逅

息子「というわけでついに五話までやってまいりました! あるいはやってしまいました! 自称探偵ブルース二次創作企画『開運探偵の敗北』!」

くもる「ゆゆっ!? 数ヶ月ぶりに現れてなにメタな発言をしてるんですか、このヒトはっ!?」

息子「及びとあればドカンと参上! ども! メライキコです!」

くもる「呼んでないんですけどっ!? 何の用ですかっ!?」

息子「いやー、やっぱこういう小説をね、書いてるとね、キャラとの後書き漫才をやりたくなるんだよね。だからやっておこうかなって」

くもる「ここで書いたら『後』書きにならないじゃないですか」

息子「うるせー!(笑) 小説一本書き終わった後で漫才までする体力なんて残ってないんだよ! だから逆に考えるんだ……『本編が始まる前に漫才をやっちゃえばいいさ』ってね」

くもる「どうしてそこまでして漫才がしたいんですか……」シラケガオー

息子「そんなことを言いながらも、これから始まる作者との掛け合いに密かに期待を寄せているくもるくんなのでした……w」

くもる「そんなこと考えてないんですけどっ!? 地の文がないからって勝手に捏造しないで下さいっ!」

息子「というわけでね、まぁ前座の漫才みたいなものだと思って読んでください」

くもる「どちらかというと映画の本編前に流れてくる某ウサギアニメみたいな邪魔さですけどね」

息子「ああ、紙兎ロペのこと?」

くもる「なんでわざわざ伏せて言った心遣いを無為にするんですか貴方はっ!?」

息子「紙兎◽︎ペのこと?」

くもる「隠せてそうで隠しきれてないっ!? ……ところで、後書き改め前書き漫才をするとして、何をやるんですか? いきなり言われたから、話のネタなんて用意してないですよ?」

息子「ああ、それなら大丈V! こんなこともあろうかとね、読者の皆様から送られてきたお便りを用意しておいたんだ」

くもる「なるほど、これを読んでいこうってわけですか」

息子「そゆことそゆこと~。じゃあ早速行ってみよう! というわけで記念すべき一回目のお便りは、蟹玉県にお住いの『呉内くれない 臼野うすの』さんからです! さんきゅな~!」

くもる「どこかで聞いたことある名前ですね」

息子「どれどれ、何が書いてあるかな……『息子さん、くもるくん、こんにちは』こんにちは~! 『わたしは原作は勿論、派生作品まで読んでるくらいの自称探偵クラスタです笑 『開運探偵の敗北』も、いつも楽しく読ませていただいてます!』おっ、嬉しいねぇ! 『一ヶ月前に隣の席の友達に自称探偵シリーズを勧めたんですが、あっというまに広まって、今ではクラスどころか学年全体に自称探偵ブームが来ちゃってます! 今年の学園祭の劇は自称探偵を脚本にするクラスばかりになっちゃうかも笑』はえ~、そんなことになってんの!? 舞台版の自称探偵とか絶対面白いじゃん! 『これからもお体にお気をつけて執筆頑張ってください! 応援しています!』 さんきゅな~! いやぁ、どうよくもるくん! こんな感動的なお便り貰っちゃったら、やる気出てきちゃうでしょ!? なにかコメントある?」

くもる「そうですね……自称探偵シリーズの劇をやったとして、ジブンみたいな美少年を、そんじょそこらの凡人が演じられるとは到底思えませんね」

息子「ファンレターに対するコメントがそれとか、どれだけ世間をレロレロすれば気が済むんだこのクソガキは? 今回の話で痛い目に遭わせてやっからなぁ?」

くもる「ファンレターで得たやる気をそんな方向に使わないでくださいっ!」

息子「うるせえええええええ!!!! なんなら今すぐにでも痛い目に遭わせてやらぁよ!!!!! くらえ!!!!!!!!!!!!」

くもる「えぐぅぅぅうう!!!!! よくもやりがったですねっ!!!!!!!!!!!! 負けてたまるかよおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!! うおおおおおおおおおおバリツバリツ!!!!!!!!!!!!!!!!」


 次回に続く……?





























♪開運探偵のオープニングテーマ

 作詞/女良息子 歌/一番星くもる(CV:加藤英美里)


 あれは誰だ 誰だ 誰だ

 星か? ノン! 天使か? ノン! 黄金か? ノン!

 全部ノン~~~!!

 その名はくもる 一番星くもる(くもる~!)

 (くもる:まぁ、ジブンが放つ後光はあまりに眩しすぎるので、そんな勘違いをしてしまうのは仕方のないことかもしれませんねェェェェ~~~~!!!!!)

 今日もピカピカのタピタピでタピオカな脳細胞で謎をまるっとすりっとオ・ミ・ト・オ・シ

 目立つためなら何でもするぜ 何でもできる金ならある

 ゆけ! ゆけゆけ! 坊ちゃまァン!

 解け! 解け解け! クエスチョーン!

 かーいーうん! (デデンッ)たんってい~~~!


 それでは本編行ってみよう!



「オルァオルァゴルァゴルァ!!」


威勢のいい声と共に有朱野が大広間の扉を開いたのは、くもるたちが館に到着する数分前のことだった。

背後に従える舎弟たちに佐葉三十五子を新たなメンバーとして加えた彼は、喧しい足音を立てながら歩いて行く。

やがて広間の中央に着くと、彼は周囲を見回し、口を開いた。


「わしの名は紅有朱野──『極道探偵』と言えば分かるか?」


有朱野の名乗りに、その場にいた自称探偵たちの間に緊張感が走る。彼がこれまで為してきた悪行を考えれば、当然の反応だろう。


「わしがお前らに言うことはただ一つ、『エルメシアへの挑戦権を諦めろ』じゃ。さもなくば、帰れなくなるどころか──」


有朱野は懐から黒光りする物体を取り出した。先程一番星くもるに凶弾を放った拳銃である。

有朱野は握った凶器の銃口を天井に向け、引き金を絞った。軽い音と共に、天井に穴が空く。


「──あの世に定住することになるかもしれんぞ?」


コールタールを思わせる粘着的な笑みを口元に浮かべ、有朱野は脅し文句を終えた。

裏社会の人間からの衝撃的なメッセージに、場は静まり返る。有朱野は己の勝ち価値を確信していた──しかし。

しかし。

周囲にいた自称探偵たちの中から、ひとりの男が有朱野に向かって踏み出してきたことで、彼は怪訝な顔をすることになる。


「はぁ? 誰じゃ貴様は? 命が惜しくないんか?」


己の脅しに屈しないどころか立ち向かってくる男の姿に、有朱野は不機嫌を隠そうともしない口調になる。

拳銃の照準を男の眉間に合わせながら、有朱野は


「無謀を売りとする部分があるのが自称探偵という人種じゃが、貴様の場合は無謀というより阿呆じゃの。拳銃を持ってるわしに立ち向かおうとは、どうやら頭がちぃと足りとらんらしい」

「…………か?」

「ん?」


男が口にした言葉を聞き取れず、有朱野は聞き返す。

男は同じ言葉を繰り返した。


「おまえ、怪盗か?」

「怪盗? 何をおかしな質問をしとるんじゃきさま。……えっぐっぐ、じゃが行く行くはエルメシアを捕らえ世界中の重要施設に予告状を送らせる未来が半ば確定しているわしは、怪盗とも言えるかもしれんの。『極道探偵』ならぬ」


『極道怪盗』じゃな──と。

続けて言おうとした瞬間。

どるんっ、という排気音と。

じゃきんっ、という切断音が響き。

有朱野の顔の皮は切り落とされた。



「ウエエエエエエエエエエエエエ!!!! ウヴ!!! ボオオアアアアアアア!!!!! ア!!! アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」


有朱野の絶叫と共に、時系列は現在に戻る。

彼の正面に立つ男の手には、小型のチェーンソーが握られていた。最っ高にクレイジ〜↑な感じの凶器である。これで持って男が有朱野の顔面に大胆なイメチェンを施したことは推理するまでもなく明らかだろう。


「な、なんですか……このネガティブでハッピーでチェーンソーでエッジな感じの状況は……」

「有朱野さんは悪魔みたいな人でしたけど、デビルハンターに目を付けられたんですかね」


くもるとれんげが目の前に広がるスプラッタな光景への感想を呟く。

顔の神経と空気がゼロ距離でイチャつくことになってしまっている有朱野は、両手で顔を覆いながら悶絶していたが、しばらくすると糸が切れた人形のように倒れた。あまりの痛みに気絶してしまったのだろうか。ヤクザの風上にも置けない男である。

くもるたちが衝撃的なウェルカムイベントに放心していると、横から少女が声をかけてきた。頭から生えたウサギの耳のようなリボンが特徴的な、十代前半の少女である。


「可愛い私は可愛い上に慈悲深いから忠告してあげるわ。今は広間の隅っこで静かにしていなさい、地味にね」

「ゆゆっ!? 九百九十九の異名の一つに『派手探偵』の名も持つ一番星くもる様に地味になることを強制するとは、どこの不届きものですかっ!」

「別に忠告を受け入れなくてもいいわよ。その場合、アナタがあのイカれたチェーンソー男──『復讐探偵』に目を付けられることになるだけだし」


可愛らしい顔に呆れたような表情を浮かべながら、少女は言った。

彼女の言葉に、話を聞いていたれんげは目を丸めて、


「『復讐探偵』!? 『復讐探偵』ってあの幡豆はず 和法わほうですかぁ!?」

「知っているんですか、れんげさんっ!?」

「『超危険級自称探偵』の内の一人ですよぅ!」


『超危険級自称探偵』とは、他人の迷惑を顧みない危険人物の集まりである自称探偵においても、特に危険であると判断された自称探偵に与えられる称号である。ちなみに、これまで危険性を散々言及されている紅有朱野でも、その一つ下のランクである『危険級自称探偵』の評価しか受けていない。そのことから、『超危険級自称探偵』である『復讐探偵』の危険性は窺い知れるというものである。


「『復讐探偵』はその名の通りエルメシアへの復讐のために活動している自称探偵なんですよぅ。『復讐探偵』と大怪盗の間にどんな因縁があるかは定かではないんですけど、その復讐心は凄まじいもので、彼はエルメシアだけでなく、『怪盗』という存在全てに憎悪を抱いているらしいんですぅ」

「そーいうこと。で、アイツは出会う人間全てに『怪盗か否か』を質問してくるの」

「もしそれにイエスの意味の答えを返したらどうなるんです?」


そう質問したくもるだが、その答えは彼自身も察していた。


「そりゃ、ああなるに決まっているでしょ」


言って、少女は視線だけをくもるたちとは別方向に向ける。

その先には、チェーンソーに顔の皮を剥がされた『極道探偵』の姿があった。


「『『復讐探偵』が現れた現場は事件の解決から遠ざかるどころか、新たな事件が量産される』──有名な逸話よ」

「うへぁ……まるで都市伝説の妖怪みたいですね」


くもるは赤マント青マントを思い出しながらそう言った。都市伝説と違うのは、たとえルール通りに安全な答えを返したとしても、命の保証がされるわけではないことが容易に想像できることである、もし例の質問に『うすノー』と返すだけで安全圏に逃れられるなら、『復讐探偵』は『超危険級自称探偵』にカテゴライズされていないだろう。

そういうわけで、今は『復讐探偵』に目を付けられないよう大人しくしておくべきらしい。これは目立ちたがり屋なくもるにとっては拷問に近い苦痛だが、顔面の皮を切り取られる苦痛に比べれば我慢できようというものであった。

こう考えるとチェンソーマンの目を『大広間の扉を開ける』という否が応でも目立ってしまう行動から悲鳴で逸らしてくれた有朱野には感謝すべきかもしれない。


「とはいえ、あまり『復讐探偵』だけに注目してもいられないわよ、何せこの場には『エルメシアへの挑戦権』を求めて多くの自称探偵が来館しているのだもの。ここで開かれるのが殺し合いではなく自称探偵の実力勝負である以上、危険人物だけに目を向けてはいられないわ。ライバルのこともチェックしておかないとね──そうねぇ、たとえば……」


リボンの少女は広間の奥で机を囲んで座っている四人の男女に目を向けた。彼らは部屋の中央で起きた惨劇など意に介してないようであり、朗らかに談笑している。


「彼らは四象探偵ししょうたんていと呼ばれているわ」

「四象探偵?」


声をあげたのはれんげだった。


「なんだかサバンナや上野動物園みたいな名前ですねぇ」

「四象は文字通り四匹の象って意味じゃないんですよれんげさんっ。そもそも『上野動物園イコール象が沢山いる場所』ってどんだけ田舎者特有の貧困な想像力してるんですかっ!」


ツッコミを入れるくもる。

まあ、彼もそこまで四象に詳しいというわけではないのだが。

たしか……龍とか亀とか虎とかいるやつだっけ?


「そう、その四象よ。日本の東で活動している『青龍探偵』、西で活動している『白虎探偵』、南で活動している『朱雀探偵』、そして北で活動している『玄武探偵』──ひとりひとりが精鋭の自称探偵であり、四人集まれば解けない謎などない彼らをまとめて、世の人は『四象探偵』と呼んでいるのよ」


なるほど。そんなビッグネームだというのなら、彼らが有朱野が晒している死体同然の姿に動揺しないほどに肝が座っているのも納得である。


「特に西の『白虎探偵』、西尾さいび 維新いあらは、たったひとりでエルメシアを逮捕寸前まで追い詰めたほどの自称探偵よ。実力だけでいえば『王様探偵』に匹敵するわ」

「え? ニシオイシン?」

「違う、サイビイアラ」

「へー、そうなんですか。ところで、そういう四人組っていかにも噛ませな四天王ポジションっぽくないですか?」


ナメナメ台詞で会話を締めるくもる。おまえのキュートな顔面も剥いでやろうか?


「ああ、そうそう『王様探偵』といえば、彼の紹介も外せないわね」


少女が次に指し示したのは、佐葉メイドの誰かから受かったワイングラスで口内を湿らせている最中の男であった。有朱野と同じか年上ぐらいに見える、年輩の紳士である。


「あのお爺さんは『師匠探偵』。数多くの自称探偵を輩出し、あの『王様探偵』の育ての親でもあるわ。『自称探偵界のケイローン』とも呼ばれているのよ」


この情報には流石のくもるも驚いた。

『誰かの元で教えを乞う姿が想像できない自称探偵』でランキングを作れば堂々の一位に輝きそうなアダムに師匠がいたとは、今世紀最大のニュースである。これは原作者のうすのくんも知らなかった特ダネじゃないカーン?


「そもそも自称探偵って誰かの元で修行するものなんですかっ? 自分はそんなことなかったんですけどっ」素朴な疑問を口にするくもる少年。

「まあ、そういう人も世の中にはいるんじゃない? 可愛い私は違うけど」リボンの少女が答え、れんげの方に顔を向ける。「アナタはどうなのよ」と言いたげだ。

「私も違いますねぇ。離島の神童として煽てられていたらいつのまにか大人になってて、『まだ仕事も決まってないし、とりあえず探偵を自称しておこうかなー』ってなっただけですし」


聞いてもいないロクデナシ大人情報まで丁寧に添えられていた。『自傷探偵』はサービス精神旺盛である。聡明な読者諸君なら言わなくても分かっているはずだが、綿箆れんげに元ネタの人物なんていない。いいね?


「他にも『他称探偵』に『英雄探偵』、『奇跡探偵』に『人間探偵』と名だたるメンバーがいるけど、まあこれ以上説明するのも疲れるしね」


作者的に、ここら辺で書くのに飽きてきたのである。


「だから後はアナタ達で調べてちょうだい」

「ゲームの攻略本並に中途半端な説明でしたねっ! まあ感謝しておきますっ!」


くもるは感謝とナメを同時に吐き出した。


「あのー、最後に一つ聞きたいんですけどぅ」


説明の打ち切りを告げられた後で質問することに申し訳なさを感じているのか、れんげはおずおずと手を挙げた。



それは当たり前な──ともすれば、一番最初にしていてもおかしくない質問だった。


「ああ、可愛い私のこと? そうね、うっかり忘れてたわ」


リボンの少女は軽い会釈をして、遅めの自己紹介をする。


「可愛い私は『偶像探偵』──世間では人気アイドル『アリス』の方が有名かしら?」



久々の更新で続々と登場する新たなキャラクターたち!!

こんなに出して処理出来るのか!?

そして、くもるたちを待ち受ける試練の全貌とは!?

そもそも、この小説の続きは書かれるのか!?

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