析雷神1
消えたままの
前にいる大鬼も、
もちろんその体つきは、大鬼を更に上回る。おそらくその倍はあるのだろう。だが、特筆すべきはそれだけではない。
長い四本の手には、それぞれ大きな太刀が握られている。
無機質な顔には、まるで貴族のような化粧が施されている。その事は、からくり人形のような体には不似合いに感じるが、不思議な気高さがそこにあった。
そして、その存在を固めるように、前と左右に女の幽霊が漂っていた。
全て
にもかかわらず、それを目にした途端、一行はそこで固まっていた。互いの姿は見えないままで。
まるで金縛りにでもあったかのように。
話で聞くのと実際に見るとでは大違いな事だったのだろう。
おそらく相手の姿を目の当たりにして、気勢をそがれたに違いない。仲間の姿が見えないという孤独感も影響しているのだろう。それが不安を呼びこんで、必要以上に体を固くしてしまっていた。
だが、そんな事を気にしないような言葉が聞こえてくる。いつものように、いつもの感じで。声の主の姿は見えないまでも、その顔は皆にいつもの顔を向けていた。
「どうした? いかないのか? 相手は番人。あそこからは動かない。それに、相手はすでに気付いている」
「いくわ! 当たり前じゃない!」
あくまでも気丈に応える声が聞こえたかと思うと、クスリと笑う声も聞こえる。それに応えるように頷く姿も、そして自ら気合を入れ直す姿もあった。見えないまでも、そこにいる事が容易に想像できる。それが、
「よし」
小さな気合の声をあげた
だが、
***
「…………違いたる、吹きすさぶ風、至りし……か……。関を守るが、麿の務め。なれど、
だが、まだ襲ってこない。虎視眈々としたその眼は、
「生者が生身のまま根の国に踏み入るなど、
振り上げていた太刀をおろし、
だが、それは
「待ってください!
大鬼のすぐ前に、
その無謀さに、大慌てで駆け寄る
だが、
「
必死に訴えかける
「朋読の娘か……。吹き荒れるこの世界に、安らぎの風をもたらす者。汝と同じことを申した娘は、それをする為に根の国に赴くことを願った。麿も
一瞬、
ただ、それを
「安心せよ、朋読の娘。汝と同じ娘はまだ健在。じゃが、一人はまもなくこの世界の住人となろう。それが根の国に生身で訪れたものの宿命」
その無防備な背を見ても、大鬼は動かない。あくまで
倒れそうになるところを
その三人の顔を順番にみる
「
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