第三章 根の国の異変
黄泉平坂を越えて
目が覚めたあの時、少年の目には青い空が広がっていた。その色の碧さが少年の瞳に宿っている。だが、今見上げている空の色は、赤黒いものだった。太陽はなく、代わりになるような物は無い。だが、空全体が赤黒く光ることで、この世界を照らしている。しかも、大気のうねりを感じさせるように、ところどころに縞模様が出来ている。
ふと視線を下に向ければ、そこは赤茶けた大地が広がっている。緑の植物はここにはなく。同じ色の岩と、同じ色の植物のような形をしたものがそこにあった。
もちろん人の姿はない。ここは、生者と死者の間の世界。根の国に至る下り坂。
ただ、人の代わりに
小鬼や鬼。魔犬や魔狼といった姿もそこにあった。変わったところでは、使い古された人形や人の生活の道具といったものが、時折行列を成して通っていく。
目的があるのか、ないのか。それすらわからないが、そんな光景が繰り返されていた。
それを眺める少年の姿は、今は誰にも見られていない。
ただ、時折鼻の効くものがいる。何か感じるものがあるのだろう。その者は他の者が立ち去ってもなお、周囲をしきりに嗅ぎまわっていた。
だが、それも一瞬で終わりを迎える。
背後から静かに喉笛をかき切られ、倒れる音さえ許されずに、そこにいたことを消されていく。嗅ぎまわった姿のままで、それは闇に葬られていた。あたりに飛び散った血の跡は、大地が余すところなく吸い込んでいく。
そして再び、少年の姿は消えていく。
それが繰り返し行われていた。やがて周囲にその気配が無くなる頃、少年は消えたまま移動を開始する。素早く、そして警戒しつつ。
そうして向かったその場所は、少しくぼんだ場所に揺らぎを見せる場所だった。それはかつて青龍の洞窟で見た結界と同じもの。姿を消した少年がそれをくぐると、中では
*
「遅かったじゃない。どうだったの?」
一瞬その結界が揺らいだ後、何者かがそこに入った様子が広がる。それを見た
その瞬間、
「向こうにいるのは、情報通りからくり人形のようなものだ。ただ、かなり大きい。しかも、さっき倒した魔犬と違い、感じるその強さはけた違いだ。だが、倒せない訳じゃない。さらに、その背後には、明らかな空間のゆがみがある。おそらくそれが
淡々とした報告をする
周囲の地形、そこにいる者達の姿かたちとその位置関係。それらをつぶさに報告していく
「なるほどね、敵は五体。
その質問に黙って頷く
「だとすると、これは厄介ですね。これは幽霊が術を使い、
真面目に語る
一瞬、
「いや、術以外にも普通に攻撃してくる。普通に刃も通る」
「知っています。地上もそうです。瘴気の濃い所ではそうです。常識です。
無表情ながらも、怒った感じを見せるようにそっぽを向く
その姿が滑稽に思えたのだろう。
「まあ、何にせよ、とにかくオレが鬼たちをひきつけておくから、あとはよろしく頼む。
「ふっ、そうまで言われるとしかたがない。所詮は機械仕掛けと死に損ない。この僕の爆炎で跡形もなく吹き飛ばしてやろうか! さあ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます