祈り
いや、
だがそれは
ただ、最初から混乱の中に埋もれていた
*
駆けていく
その彼が見せた憤怒の表情。
横顔だが、その表情を一瞬だけ見た
当然のことのように、
幻想的な炎の蝶。
その姿が、
声にならない叫びが、
炎をその身に宿した蝶の群れ。いや、炎そのものが蝶の形をして、天を焦がすような勢いで駆け昇る。そのすさまじい熱量は、陽炎のように周囲の景色を歪めている。
その中心にいる人物の姿は、紛れもなく
文字通り火に包まれている
普通なら、その姿は苦悶にのた打ち回る事だろう。しかし、
その事が、
そして、
あまりにも唐突な事象と信じられない出来事は、人の思考を停止させる。
だが、時の流れは止まらない。
鳴り響く衝撃の音。
その音が意味することを察したのだろう。虚ろな
弾き飛ばされた
あたかもそれは
その恐怖が、
だが、急に引き戻された心は、体をうまく扱えない。
祈るように両手を合わせた姿のままで。
ただ、瞳だけは片時もそれを見逃さない。事実を刻々と
抗いようのない力が、
――お願い! 誰か!
言葉にならないその願いは、誰に告げたものでもない。ただ、誰も聞くことのないその願いは、その誰かの耳に届いていた。
避けようのない攻撃が繰り出されようとする刹那、そこにほんのわずかな空白の時間が生まれていた。
その一瞬の出来事が、生死を分かつものとなっていく。紙一重でその刃を避ける
まるでそれを待ったかのように、うなる刃が
ことさらに転げて、距離を取る
いや、その衝撃が
避けた本人も、どうして生きているのかわからないに違いない。自らの四肢を確認した後、油断なく僧兵を見ている。
だが、僧兵はそれ以上追撃をする気配はなかった。
確かに、
「
女忍者をその手に拘束したままで、
「
そうつぶやいた
「
いつの間にそこに降りたのだろう。争いが繰り広げられているその場所の近くに、
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