ぶつかり合う力
それは純粋な力と力のぶつかり合いだった。
技も駆け引きも何もない。ただ、真正面からの打ちあいだった。
単純なだけに、明快な答え。ぶつかり合う二人は、ただそれを証明しようとしている。
勢いをつけて駆け降りる
ただ、何かを考えたのだろう。そのままの勢いで跳び上がる
だが、それは
駆け降りる勢いをもってしても、重い鎧を着た
ただ、それはそれまでの勢いをどうしても緩めてしまうものとなる。無防備な体をさらしてしまう事になる。
だが、それはお構いなしといわんばかりに、その攻撃を繰り出していた。
走ってきた勢いを威力に変える。
己の体重と鉄槌の重さに、その勢いを加えた一撃。それが、
それは今の
その瞬間、無機質な悲鳴がその場に響く。互いの武器が出会う音は、周囲の視線を一斉に集めるものになっていた。
しかし、それも一瞬の出来事。
次の瞬間には、互いに衝撃で弾かれていく。自然と距離を取る形になった
だが、その闘志を抑えぬままに、
「あの時の小僧が、やるようになった。いや、そうか。あれから十五年か。ワシが年を取ったのかもしれぬな。十五年ぶりにこの地に帰ってきて、久々に息子の顔を見た気がするわい」
「だまれ、外道! 貴様の息子になった覚えはない! 戯言をほざくその口。その首ごと切り落として、母上の墓前で叩き割ってやる!」
その空気を振り払うように、
「ふむ。そのような仏の道に背く所業を口走るとは……。これでもワシは僧の端くれ。十二神将などと呼ばれる者の一人。そのような話を目の前でされては、看過するわけにはいかぬ。しかも、一夜とはいえオマエの父となったワシじゃ。まっとうな道に戻さねば、オマエの母上に申し訳がない。たとえ、一夜の情だとしても」
薙刀を構え、腰を落とす
「だまれ、腐れ外道!
「オマエの母は追手からオマエを守るために、その身を御仏に捧げると言ったのだ。ワシの目の前でな。だからワシは、御仏に代わってその願いを叶えた。ただ、そのような雑事に、御仏のお手を煩わすわけにもいかぬであろう? 故に、願いを叶えるワシがその身を頂くのは至極当然。やれやれ……。心根が腐ると、物の見方も歪むよの。ついでに言えば、今のお前があるのはこのワシのおかげ――」
その言葉を最後まで聞かぬうちに、
再び打ちあう鉄鎚と薙刀。ほんの一瞬拮抗したかのように思えたが、その力の差は歴然だった。
その身で様々な
「どの口が!」
「
再び挑みかかる
それは息もつかせぬ二連撃。
最初の一撃ですでにバランスを崩していた
そして、
それは
だが、
「ほほう、このワシに血を流させるだけでなく、わずか一瞬でも、ワシの動きを止めるか。やりよる、やりよるのぉ、小僧」
自らの体に刺さったものを、無造作に抜き取る
振り返った
そこにあるのは、片手で女忍者を拘束し、もう片手で
両腕を後ろ手で拘束されている彼女は、自分の置かれている状況が全く理解できていない様子で、あたりかまわず喚き散らす。
「ほほう。あの一瞬で、分身と影移動を同時に。しかも、あえて分身に攻撃をうけさせ、敵の目を引きつつ、自らはその背後に回り自由を奪う。しかも、あの距離でそれを成し遂げたか。抜け目のない狡猾さ。驚くべき素早さ。そして、類稀なる強さ。このワシにさえ、その気配を読ませぬとは恐れ入った」
心底感心したように、その目を
それは新しい標的を見つけた喜びなのか、鈍く怪しい光を放っていた。
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