崩れ落ちた白虎の砦
五人がたどり着いた時には、少し燃えていた所もくすぶる状態になっていた。まだ、そこに熱気はこもって近づくことはできない。消されたというよりも、燃えるものが無くなって、自然に鎮火した状態と言ってもいいだろう。それ以上近づくこともできず、なすすべもなく見守る五人。しばらく無言で立ち尽くす中、その詠唱が聞こえてきた。
「水龍豪瀑陣」「水天神激流呪」
ほぼ同時に結ぶその術は、焼け落ちた砦の真上で炸裂する。術同士が持つ大量の水がぶつかり合って雨となり、砦の上に降り注ぐ。
立ち上る水蒸気が、まだそこにあった熱を物語る。悠々と追いつく密教僧と陰陽師。
だが、それを咎めるものはいなかった。むろん、礼を言うものもない。
「あーあ、これじゃあ
「ここにいたのは、皆無頼の徒。引導を渡してやるのも御仏の慈悲。書物に埋もれ、夜空を眺めている口だけの者にはわかるまい。だが、もちろん拙僧は存ぜぬ。誰がやったかなど、わかるはずがない」
互いに罵りあう
「お嬢。多分、ここには宝珠は無い。すでに、持ち去られたに違いない。ここから一番近いのはどっちだ?
あまりに見たことのない
「
「どういう事よ?
取った腕を振り動かし、答えなければどうなるかという脅しの視線で見つめる
だが、
「僧院と天文院に出し抜かれた。オレ達が青龍でもたついている間に、残りの四神の宝珠を取りに行ってるんだ。おそらく、より多く集めたものが主導権を握るつもりだろう。こいつらの協調性の無さとか、全部そのためだったんだ。クソ! あの坊主頭と石頭! 最初から仕組んでいやがった!」
地面をけり、悔しがる
「人聞きの悪い事を申すでない。拙僧が思うに、根の国に対応するのは皆でという
手を合わせ、祈りをささげる
「
そう告げて、祝詞を唱え始める
「いつかけてもらっても、
何を想ったのか、表情を変えない
「『
場違いな感想の
だから、
「そうじゃない。そうじゃないんだ、お嬢。根の国の前には、
だが、遠く離れる
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