疑いの中で2
不意に訪れた静寂は、おそらく居心地が悪かったのだろう。立ち上がって動かない
「まあ、まあ、お嬢。そろそろ座った方がいいと思うぞ。せっかく『人の話は最後まで聞く』を実践しているんだ。もう少し頑張ってみた方がいいんじゃないか? このままだと、さっき感動したふりをしたオレがかわいそうだ」
「そうです。私の驚いたふりを白紙にする気ですか? それはそれで驚きです。でも、
「…………何かしら? それ……」
座りながらも
それでも睨み続ける
その様子に、
「『この子はアタシのものだから、アタシの好きにするから』って感じでしょうか。名前にしても、かなり適当につけてましたし」
「な!?」
「その話な。確かにそうだ。そうだな……」
吹きこぼしそうになるのをこらえた
タイミングを逃した感じの
それを待っていたかのように、
「確かに、あれはかなり適当だったな。『記憶を失ってもアナタはアナタ。ここにいるアナタは、唯一無二の存在だわ』までは、オレもちょっと感動したが――」
「ええ、まったくです。台無しでした。『だから、アナタは
肩をすくめる
「そんな適当な……。そなたはそれでよかったのか?
先ほどは疑念の瞳を向けていたにもかかわらず、
そこには、何か言うのを必死でこらえる
「俺には記憶がない。戦う方法は体が覚えているが、何をしに来たのか、何をしていたのかもわからない。何より、俺自身が誰なのかも分からない。そんな時に俺が俺でいいのだと言われた時には、本当に救われた気分だった」
その言葉を聞くまでは――。
「だから、どんな名前を付けてもらっても文句は言えないと思う。たとえ、どんなひどい名前と言われても、俺は感謝しなければならないのだと思う」
その瞬間、まるで岩でも落とされたかのように、
「『どんな名前を付けてもらっても文句は言えない』って、そうだよなぁ。文句は言えないよなぁ。なあ、お嬢」
「『どんなひどい名前でも、俺は感謝しなければならない』ですね。感謝されていますよ、
にやけ顔と、無表情。その顔が、
穴があったら、今すぐにでも入りたい。
「
その様子に慌てる
「お嬢ちゃん。あとは任せるぜ」
「お任せされます。ご心配なく」
真剣な顔で
「
この状況は作為的なものである。そのことを理解した
「
「ああ、俺もからかってるだけだ。なに、お嬢の事だ。明日になれば、やり返してくる。どうするか、賭けるか?」
三人に礼をして去る
それを丁重に断る
残念そうに肩をすくめた
「さて、酒もなくなったことだし――」
不敵な笑みを浮かべ立ち上がった
そんな二人の姿を、
「場所を変えるぜ、少年。オマエさんに会いたいという人がいる」
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