密議
扉を全て閉めきっているにもかかわらず、どこからともなく部屋に風が入ってきている。そのたびに揺れる燭台の炎。光と影の動く様は、まるで手を取り合って舞い踊っているかのようだった。
朋読神社の一角にある、光魔殿と呼ばれる建物。その一室に、五人が一枚の大きな地図を挟んで座っていた。各々、板間に円座を敷いて座っている。上座には簡易式の神棚が設置されており、その前には二人の男が座っている。その正面、地図を挟んだ反対側に、
神妙な面持ちで、誰も言葉を発しない。だが、それでも無言が飛び交うこの部屋の中は、微妙な空気で満ちていた。部屋に入った当初は周囲を警戒していた少年。彼も、今はおとなしくしている。その雰囲気が窮屈に思えたのだろう。深くため息をついた
「少年、こちらは朋読神社神主である
座る位置を少しずらし、
目覚めた時には、あの草原に横たわっていた事。
今身に着けているものは、自分の周囲に散らばっていた事。
何が出来るか、どんなものを使用するのか。戦いに関する技術については、刀を手に取った瞬間に理解したこと。
そして、自分に関する事は、何一つわからない事を。
まるで他人事のように、淡々と話す
「それが俺の知る全て……だと思う。俺には、それしか言えない……。怪しまれても仕方がないと思う……。でも、俺も俺自身が分からない。俺が知っているのは、俺が目覚めた後のことだけ。襲ってきた狼……、
その話を真剣に聞く
物言わぬ時間が、この部屋の中で居座り始める。だが、それも長くは続かなかった。
「どうやら、真実のようだ。彼が
その沈黙を破り、深々と頭を下げた
「私も礼が遅れて申し訳ない。この
屈託のない笑顔を見せた後、
「いや、俺は
少し目を伏せ、急に口ごもる
「行く当てもない俺が今持っているのは、この『
まっすぐ見つめた
――とその時。騒がしい足音が聞こえたかと思うと、
だが、それも長くはない。一拍の静けさを打ち消すように、ずかずかと部屋に押し入る少女。だが、その歩みも途中で止まる。そして次の瞬間、感情を隠しきれない少女の声が部屋いっぱいに広がっていた。
その目を、部屋に置かれた地図から、上座の二人に移しながら。
「やっぱり! こんな事だと思ったわ! お父様!
ここに至り、ゆっくりと振り向いた
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