青龍との戦い6
「止まった……、の……か……?」
破裂した水球が、激しく降る雨のように感じる中、
まわりの景色は煙と雨のように降る水が交じり合い、目と鼻の先にある景色も見えにくいものになっていた。だが、あの詠唱は聞こえてこない。そして、さっきまであった膨大な水の塊は、もうどこにもなかった。
やがて、雨はおさまり、倒れた青龍の体から発した煙も四散していく。それは、そこにいる人間にその真実を伝えるものとなっていた。
「なんだ? これは?」
絶句した
その立派な体つきが示すように、彼は高い生命力と耐久力、術耐性を持っていた。ひょっとすると竜人の
「青龍はどこに!?」
煙が晴れ、視界が良好になった広場を見回す
だが、いくら探してもこの場にその姿は見つからない。だから、視線がそこに向かうのは、至極当然の結果と言えるだろう。
「あそこ! 何かいる!」
少ないながらも、煙も行き場がないのだろう。その暗さも加わって、まだよく見えない状態が続いていた。
だが、その中でも青白い光は動きを止めていなかった。再び上がる絶叫。それは、この場所で何度か聞いたことのある響きだった。
「
「
その時、煙の中から影が飛び出す。
身構える
「何か用か?」
瞬時に
しかし、それは無理もない事だろう。今の
もし、人が変わったと言われても、それを信じることが出来るだけの変貌を彼は見せている。だが、それほど超然とした雰囲気を漂わせているものの、彼は
まるで、何か指示を待っているかのように。
「呼ばれたと思ったが、呼んでないのか?」
彼は
その時、
「用が無いなら、俺は行く」
そこで何か変化が起きたことを感じたのだろう。再び
だが、その行く手を
「おい、どうなってる?」
何も言えずに佇む
「説明して。体は大丈夫なのよね? 今まで何してたの? 今どうなってるの?」
彼女の翡翠の瞳が、彼の真紅の瞳を食い入るように見つめる。しかもそれは、その場にいる者たち全員の気持ちなのだろう。その答えを求めるべく、いつしか全ての視線が彼に集まっていた。
「今はそんな場合じゃな――」
「説明して!」
有無を言わさぬ調子の瞳に、真紅の瞳がその輝きを少し落とす。だが、小部屋の気配を感じたのだろう。注視した瞳は、再び輝きを増していく。ただ、その色はどこか落ち着く感じがあった。
「あの小部屋は上に行くことが出来る。縦穴といった方がいいのかもしれない。しかも、かなり上の方には横穴もあった。傷を負った青龍は飛び上がり、後から来た大きな竜人と入れ替わっていた。そして、姿を変化させたあの大きな竜人に戦わせて、青龍はあの上から術を唱えていた。ただ、そのあとから来たもう一人の護衛の竜人が手練れだったので、術止めに時間がかかってしまった。ようやく青龍を麻痺させて突き落とし、今しがた護衛の竜人を仕留めたところだ。あとは、青龍を残すのみだ。そして、そろそろ麻痺が解ける頃合いだ」
肩に手を置かせたまま、
まだ、部屋の中は暗く、よく見えない状態が続いている。しかし、
「解ける」「待ちなさい!」
そう告げて駆けだそうとした
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