第二章 荒ぶる四神
新たな仲間1
まだ朝の早い時間にもかかわらず、酒場は多くの人で賑わっていた。朝から酒を飲む者もいれば、ただそこで寝ている者も多くいる。交じり合う、談笑や陽気な歌声。そういった喧騒が、酒場の中で居心地よさそうにしていた。だが、そんな賑やかな場所であるにもかかわらず、カウンターから出た驚きの声は、酒場全体に響いていた。
不意に訪れた沈黙は、『何事が起きたのか』という興味の証。だが、衆目を集めた本人は、それに気づくのが遅れていた。
だが、違和感という波は次第に彼女を飲み込んでいく。不意にその空気を感じた少女。そっと振り返ったその先にある顔は、皆同じようなものだった。
とっさに居直る
やがて、空気が入れ替わる。
その沈黙が、徐々に人々の興味を失わせ始める。進展しない事態は、それ以上待っても無駄であると、人々に語りかけていく。その言葉に耳を傾けた人から順に、
酒場がいつもの喧騒を取り戻した頃、
「なんで? どうしていきなり? この間はアタシに引き合わす人なんかいない。訳ありでもいいなら紹介するとか言ってなかったかしら? だから、あんなのが来たわけよね? でも、丁度いいからまた言わせてもらうけどね。あんなの紹介しているようじゃ、『口利きのお園』の名が泣くわ」
隣でなだめようとする
「なんだろね、この子は……。まあ、いいさ」
どこか遠くにつぶやくお園。だが、
「この間は、この間。今日は、今日。嘘か
再び吹かした
「知ってるわよ! でも、仕方がないじゃない! 『何故!』って、アタシが言いたいくらいよ!」
「おやおや、こんな事で逆上するなんてね。『何とかする』なんて威勢のいい事言ってたのは、どこのどなたかしらね? そもそも、あたいの質問の答えがまだだよ」
「
悔しさがにじみ出る
「まあ、わかってるじゃないか、優秀、優秀。じゃあ、ご褒美だよ。まず、アンタが根の国に行きたがっているのは知ってるさ。『父親の許可がないから行けない』という問題じゃない、というのも知っているよ。でもね、大人たちの事情以外の要因だってあるのさ。正直言って、アンタは実力が足りない。だから、僧院も天文院も人を出さない。わかりきった話だよ。どこも人は大事なのさ。そりゃ、アンタの姉達なら、大人の事情があっても、人は集まるだろうよ。あの子達は人望がある。いや、確かな実力があるからこその人望とも言えるね。単身で乗り込めるだけの結界と
言い過ぎたのかと思ったのだろうか? 話の途中でお園は
俯いたままの表情は、お園にも見えはしない。だからだろう、しばらく
「いいかい、根の国は
「わかってるわよ! そんなこと、わかって……」
「いいや、わかってないね。大体、アンタは人のいう事を全く聞こうとしない――」
「まあ、まあ、お園。もう、その辺でいいだろ。お嬢もよくわかっていることだ。認めたくないのが、若さってものだ」
「認めたくないだぁ? 大体、アンタがそうやって甘やかすからいけないんだよ、
「じゃ、じゃあ、オレ達向こうで待ってるから! そいつらが来たら来るように伝えてくれ」
それを黙って見逃すお園。だが、二人が自分たちの仲間の元についたのを見届けると、誰ともなしにつぶやいていた。
「まっ、アンタはアンタで、姉達とは違う力があるんだろうけどね。まったく、不憫な
目を細めつつ、
だが、その目はいつしか、その隣でおとなしく座っている少年へと向けられていた。
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