君のこと2
「えっと、あの」
俺が言葉を探してるとスマホを夏樹に取られた。
「えっ、ちょっと!」
「すいません、うちの息子が。警察に憧れてたみたいで、いたずら電話かけちゃってんです。二度とこう言う事がないように注意しときます。はい、はい。すいません。失礼します」
元の可愛らしい幼い声ではなく大人っぽく話し完全に警察を騙すこの女。
「演技派だな。それよりいつから俺はお前の息子になったんだ」
顔を背ける夏樹に無理やり顔を近づける。
夏樹は一歩下がりスマホを差し出してきた。
「あの、すいません。寝ぼけてたみたいで。この3日間全然眠れなくて」
あ、そうだ。
この子は行方不明になってるはずだ。
なんで京都にいるはずの子が東京にいるんだ。
「今君、ニュースなってるよ」
先程の記事を開きスマホを渡す。
「ほんとですね。まぁ当然でしょ」
確かに。
「でもなんで東京にいるの?」
暗い顔になりうつむき理由を話す。
「実は私家出してて」
なんとなくそうだろうとは思ってたけどね。
「それでトラックに乗ったらここに居たんです」
どうしたらそうなるんだ。
トラック?
「ヒッチハイクって事?」
「いえ、あの扉ガチャンってやるやつじゃなくてピラピラってなってるトラック。あれの中で寝ようと思ったらいつのまにか出発してて」
アニメでは見た事あるけどほんとにあるんだ。
それで京都から東京にね。
まぁ確かにカメラには映らんし行方が追えないもんな。
「でもなんで家出なんか」
「親が嫌いなんです」
ふぇー。
なんだただの思春期か。
「じゃあ警察に連絡してくるから」
「ちょっと!最後まで人の話を聞いて!」
立ち上がろうとした時服の袖を引っ張られた。
その時の顔がめちゃくちゃ可愛かったので俺は話の続きを聴くことにした。
「実は私お金持ちの家に生まれて、母に大事に育てられたんです。でも父と離婚すると私への態度が変わってしまったのです」
お金持ちとか、父と離婚だとか何そのアニメ設定。
「変わったていうのはどんな感じで?」
「過保護になったんです。まず、私の男性との交際は禁止。友人とも遊びに遊びに行くのも。出かける時はどこに何をしに行くか言わないといけなくなりました」
それで家出。
なんかまだ何か足りない気がする。
それだけで家出する気になるのか。
話が終わったのか喋らなくなった。
「まだあるんだろ」
「うっ、はい。あの実は私が片思いしていた人が居たんですよ。その人が急に学校に来なくなったんです」
「それってお母さんがやったとは限らなくないか?」
確かに変だがお母さんがやれるとは思わない。
学校から追い出すなんて。
「あのですね。私の婆様なんですけど学校の理事長なんです。しかも色んなとこに顔がきいたりして」
何そのアニメ設定!
そんな事あるもんなんだな。
そんな事があったら家に帰る気なんて起きないわな。
でもこれからこれからどうするんだ?
アテも無さそうだし。
この子にはこれから頑張って欲しい。
「じゃあね。もう夜も遅いし泊まる場所早く探しなよ」
「何言ってるんですか。貴方は誘拐犯なんですよ。最後まで面倒みて下さい」
おい、こいつ何言ってんだ。
「何ですかその顔。だってそうでしょ。未成年者を親の承諾なしに家に連れ込むなんて誘拐以外の何があるって言うんですか」
確かに。
え、嘘。
俺が悪いの、これ?
「つまり二人とも幸せな暮らしをするには"一緒に暮らす"しか無いのです」
この謎の告白紛いなセリフで俺の同居生活が始まった。
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