◆2023年度◆
58. なぜ美少女ゲームの箱はあんなにデカいのか?
注:今回はエロゲーの話だけど、ムフフなトークはないよ
今回は雑談。
美少女ゲームあるあるの鉄板ネタとして、
「なぜあんなにエロゲーの箱は大きかったのか?」
がありますね。
これは、美少女ゲームの歴史に由来します。
美少女ゲームは概ねパソコンで遊ぶことを想定していますが、昔(1980年代後半~1990年代前半)は、5インチフロッピーディスクでゲームを供給していました。(※1)
5インチフロッピーといえば、ペラペラの薄くて大きい(色は黒が多い)記憶媒体のこと。現在の一般的なCDやDVDより、物理的なサイズは一回りくらい大きいでしょうか?
収納するための箱の横幅は少なくとも、5インチフロッピーより大きくなければいけませんでした。
しかし、本当に問題だったのは、フロッピーディスクの数量です。
一般のPC用のロールプレイングゲームでも、ディスク数枚組みはあたりまえ。
絵、そしてアニメーションを売りにする美少女ゲームはもっとデータの総量が大きくなるため、ディスク数十枚組みなんて代物もありました。(※2)
それらを重ねて収納するために、箱には厚みも必要だったわけです。
つまり、フロッピーディスク数十枚も収納できるようにと美少女ゲームの箱は大きくなった。さらにいえば美少女ゲームじゃなくとも、昔のパソコンゲームの箱はたいていが大きかった。ということになります。
さて、時代は下り、1990年代後半。
Windows95のヒット直後をピークに、パソコンで発売される一般向けゲームは徐々に数を減らします。2000年代を超えるとパソコンのゲーム市場は、美少女(成人向け)ゲームの独壇場となっていきました。
また供給方法も、フロッピーディスクから、大容量のCD-ROMに変化。
後にさらなる大容量であるDVD-ROMが登場し、かつてのようにディスク数十枚を1箱にinする必要はなくなってしまいました。
もう、山のようなディスクは存在しない。
しかし、現在(ごく最近?)まで、美少女ゲームの箱は大きいままでした。
なぜか? それは、ショップでの見栄えを重視したからだと言われています。
曰く、「大きい方が目立つんやで!」
美少女ゲームといえば、秀麗かつセクシーなキャラクターイラストが売りです。
ならば、そのアピールポイントを最大限に発揮するために、デカい箱の表面にデカデカとキャラを表示し、平台の上においても目立つようにする!
まず、商品を目にとめてもらわなければ、買ってもらえるわけがない!
箱が大きいことが大正義。という戦略、あるいは信仰があったようです。
また、アメリカなどでは顕著ですが、高額の商品は箱が大きくないと納得感がないだろうという事情もありました。(※4)
その証拠に、1000~2000円代で購入できる低価格の美少女ゲームに関しては、省スペース化。映画のDVDソフトらと同じ、小さい箱の規格が使われています。(※5)
一方、定価が8800円前後する旧来の美少女ゲームは、大きいサイズを維持。
高額にふさわしいボリューム感を、箱のデカさで表現し続けたわけです。
すなわち、美少女ゲームの箱が大きい理由は3つ。
・昔は、数十枚のフロッピーディスクを箱に入れる必要があった
・大きいパッケージの方が店売りの時に目立つから
・定価8800円前後という高額に説得力を持たせるため
ということになります。
……さて、ここまでが、現代までのお話。
コラムでは、今後についても考えてみたいともいます。
なぜなら――ご存じの方もおられるでしょうが昨今、ゲームソフトを店頭で購入する文化は廃れつつあるから。通販あるいは、ダウンロードで購入する機会が増えているわけです。
物理的に店に置かないのであれば、バカでかい箱のサイズをキープする必要はありません。箱が大きいと、倉庫代もバカにならないしね。
通販やダウンロード販売を前提とした、箱のサイズとは別の方法でのソフトのアピールポイントを考えねばならないでしょう。
現在、通販(Amazonなど)や、ダウンロード販売(DMM、DLsite.comなど)で美少女ゲームを検索すると、例の大きなパッケージの表面。
あるいは箱の表面を模した、サムネイルと呼ばれる画像が表示されます。(※6)
これらは、物理的な箱を店に置いたときに最適化されたデザインです。
インターネットでの検索に適応した画像に、今後は進化していくのかもしれません。
時代の寵児。動画投稿サイトである、YouTubeやにニコニコ動画に倣えば、検索時に表示される「サムネイル」画像にどんな【キャッチコピー】を挿入するかが、閲覧数に影響するようです。
・難易度ぶっこわれゲームも救いたい
・Q.●●って意味ある? A.ないです
・15分でローストチキン 反則級のおいしさ
などなど。箱をデカクして目立つようにできない以上、美少女ゲームでも同じようにキャッチコピーによるアピールの重要性がいや増すのかも。
ソーシャルゲームを検索した時に表示されるアイコンでも、「1周年祭 開催中!」「100連無料ガチャ!」といったキャッチーなメッセージがついているものですし。
美少女ゲームの箱でもキャッチコピーは使われてきたのですが、店頭で眺めることを前提としてデザインしてきました。そのためAmazonなどのネット販売サイトで検索すると、文字が潰れてまず読めません。
ネット検索に最適化した、デザインの設定が必要となりそうです。(※7)
また、6~7年ほど前でしょうか。
ダウンロード販売されている、アニメーションつきの美少女ゲームの売り上げ(同人ソフト込み)をしらみつぶしにチェックしたことがあります。
その結果、とある売り上げの傾向が伺えました。
・「アニメあり」など文字で明言されている:よく売れている
・映画のフィルム状の装飾を画像につけて、アニメ付きであることを暗に知らせる:よく売れている
・アニメがあるのに特にアイコンでは触れていない:あまり売れていない
といった具合。
同じようにアニメーションを導入していても、検索時に一覧で表示される画像に「そうとわかる」キャッチコピーや装飾がないと、売り上げに貢献しない。
アイコンなりサムネイルなりの画像で、セールスポイントが明言されているか否かで、販売本数が変わるようでした。
売り場、環境が変われば、目立つ方法も変わる。
美少女ゲーム特有の大きな箱は、パッケージを販売するショップが少なくなったという理由だけでなく、販売戦略的にも転換が迫られているのかもしれませんね。
■ 今日のまとめ ■
・昔は、最大数十枚のフロッピーディスクを入れる必要があったので、パソコンゲームの箱は大きくなったよ。
・その後も店売りの時に目立つし、高額商品としてのの説得力があると考えられたので美少女ゲームのデカ箱はキープされたよ。
・通販、ダウンロード販売にシフトしつつある昨今、大きなゲームの箱は消える運命かもしれないね。
(※1) 5インチフロッピーディスク
正確には5.25インチですが、誰もそうは呼んでいなかったような。
(※2)
5インチフロッピーディスク1枚に保存できる最大容量が、およそ1.1~1.2メガバイト。
CD-ROMの500メガバイト、600メガバイト級と比較すると、圧倒的に少ない容量でした。そんなものでアニメーションをさせようというのだから、数十枚のディスクが必要となったのでした。(※3)
(※3)
とはいっても、1990年に発売されたスーパーファミコンのローンチソフト、「スーパーマリオワールド」が2本分収納できるだけの記憶容量はあります。自由にデータをセーブ・ロードできますし。当時としては、フロッピーディスクは「美麗なイラストの数々」にこだわらなければ、実用に耐える代物だったのです。
(※4)
アメリカのゲーム機は、軽量化しようと思えばできるのにやたらデカく設計されていることが多いようです。日本のファミコンは小さいですが、海外版のNESはとてもサイズが大きいのです。(中身の部品はほとんど変わらないにもかかわらず)
(※5)
もっとも、これは戦略的にみんなが狙ったというより、初期の商業低価格ソフトがDVDの箱を使ったため、後発のメーカーもそれに倣ったという側面が強いのかも。
(※6)
これは、DMMをはじめとする商業作品の販売サイトは意図的にしており、パッケージと似せるための画像制作のガイドライン(画像サイズや仕様の指定)があるとお考えください。なので、メーカーの都合で勝手に変えることができませんでした。(筆者が業界にかかわっていた5年ほど前までは)
(※7)
実際に、同人(インディーズ)ゲームの業界では、昔からアイコンやサムネイルに、キャッチコピーやジャンルを記載することが定例化していたと見受けられます。
商業の美少女ゲームは、物理的な売り場がかつては確保されていたので、インターネットへの対応が遅れている感じですね。
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