57. ジェスチャーに現れるキモチ・感情の小百科

 『52. ヒトの感情の正体に迫る! 前編』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888998169/episodes/16816927860760815195

 『55. キャラが立つ! 性格の描き方 前編』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888998169/episodes/16816927860760815195


 第52話より、2回のコラム(話数では5話)に渡って、創作に携わるに当たって理解が肝要な、ヒトの感情・性格について考えてきました。

 本日は、そのシリーズ3回目で最終回。


 今回は、ジェスチャー・ポーズ・表情といった体の動きとの関係性について考えていきたいと思います。この手の言語によらない表現を、ノンバーバールというのですが、


 【驚きで目を見開く】

 【にわかに信じられずに二度見する】

 【恥じらいうつむく】


 といった風に、ヒトの感情は、脳内の神経や、ホルモン分泌の反応のみで収まるものではなく、表情やジェスチャー、ポーズに反映されるもの。

 【驚いた】【笑った】とシンプルな表現ではなく、驚きで【目を見開く】【目を細めて】笑うといった伴う行動を描写してこそ、コンテンツに深みが得られるわけです。


 そこで、『ジェスチャーに現れるキモチ・感情の小百科』と称しまして。

 ヒトがAという行動・動作を取った時、どういう感情になっていることが多いかを、精神医学の資料より引用(※1)して、まとめてみようと思います。


 創作物だけではなく、日常生活を送る上での人間観察にも活かせそうな内容となっていますよ。


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※注意

 あくまで、現実の人間が、どういう行動をとりがち(ノンバーバール情報が発信されがち)かをまとめた内容となっています。創作上のものとして知られた慣用表現とは、異なる場合があるかもしれません。ご了承ください。

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■ 人間のどの部分に感情が出やすいか? ■


 まず感情が一番出やすい、人間の部位はどこでしょうか?

 「目は口ほどにものをいう」ということわざがあるように、一般的には【目】【顔の表情】あたりが挙げられるでしょうか。


 表情の現れる頻度でいえば、まさにその通りであり、

 【1:目や口元】

 が最も、高頻度に表情があらわれます。ついで、


 【2:手指】

 【3:上半身】

 【4:下半身】

 【5:胴体や姿勢】


 という順番で、表出される頻度が下がっていきます。

 しかし、異なる身体の部位から同時にメッセージが現れた場合は要注意です。

 どれが本当の気持ちを表しているのか見定めなければなりませんが、順序が逆転して、


 【1:胴体や姿勢】

 【2:下半身】

 【3:上半身】

 【4:手指】

 【5:表情】

 【6:言葉】


 という順番で本音が現れることが多いそうです。

 つまり、「言葉」や「顔」といった部位には、感情がしきりに現れやすい一方で、取り繕いやすい。

 「足」や「姿勢」は感情が現れる頻度は低いけど、本音が出やすいことになります。相手の嘘や本音を見抜くためには、足元や、次いで手の動きもチェックする必要があるわけですね。


 では、どんな行動がどんな心理状態を表しているか、具体例を見ていきましょう。



■ 顔の部門 ■


●視線が泳ぐ、定まらない

 緊張や不安がある


●目の瞬きが増える

 緊張や不安がある


●目の瞳孔が開く

 興味や関心がある


●口は笑っているが目は笑っていない

 作り笑いの可能性が高い


●目と口が同時に笑った

 同上、作り笑いの可能性が高い



■ 腕の部門 ■


●お腹より高い位置で腕を組む

 相手より優位に立ちたい、威張りたい


●お腹の位置で腕を組む

 集中して考えている時に多い


●自分を抱きかかえるようにしている

 一種の防衛反応のポーズ、怯えている



■ 手の部門 ■


●口を隠す

 驚いている自分を落ち着かせたい

 嘘をつくときに多い


●鼻を触る

 嘘をつく、不安な時


●唇を触る

 甘えたい、安心したい

 自立していない子供っぽい人に多くみられる


●髪を触る

 不安を感じている時に多い


●顎を触る

 相手より優位に立ちたい

 プライドが高い人に多くみられる


●ほおづえをつく

 満たされない、退屈している


●爪を噛む

 強い欲求不満、依存したい


●手悪い(手をしきりに動かしている)

 緊張している、退屈である



■ 足の部門 ■


●足を組む

 不安、拒絶、緊張など


●股を開く

 いわゆる威嚇のポーズ

 自信がなくて大きくみせようとしている


●つま先が相手を向いていない

 拒絶、その場を離れたい


●貧乏ゆすりをしている

 イライラしている、ストレスが強い



■ 発話の調子 ■


●声のトーン(高低)が高くなる

 不安、緊張、怒り、感情的である


●いつもより話のテンポが速い、発話量が多い

 訴えたいことがたくさんある

 あるいは、知られたくないことがある場合

 心配、不安を抱えている


●急に早口になった

 動揺している


●常に早口である

 外交的だが飽きっぽい人に多い


●常に声が大きい

 感情のコントロールが苦手な人

 子供っぽい人に多い


●常に言葉の抑揚が激しい

 自己顕示欲が強い人に多い


●声が小さくなった

 自信がない、相手が怖い


●声が大きくなった

 自信があるとき

 反対に自信がないのを隠すとき


●言葉の抑揚が激しくなった

 強く自己主張したい


●抑揚がなく言葉の量も少ない

 義務的に答えている

 疲れている、おちこんでいる



 以上です。あくまでこういう傾向があるというだけで、絶対の法則ではありません。

 実際の対人交流上において、『常に早口な人は、全員飽きっぽい』などと決めつけてはいけませんが、相手の人柄の予測という点においては手がかりになると思います。



(※1) 山根寛(編)(2018). 精神障害と作業療法 三輪書房

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