60. 運動学習と対戦格闘ゲーム SUPER X
フィードバックの話を続けましょう。
これまで4回に渡って、運動学習の理論をゲームシステムに活かせないかを考えてきました。
ヒントを出すことで、プレイヤーの腕前向上を早めることができるかも。
でも、現行のゲームの作り方では、【3:パフォーマンス(失敗の原因――動きや操作の改善点を伝えること)】の、フィードバックが足りなさそう。
フィードバックを充実させることが初心者の救済、ひいてはeスポーツのゲーム人口の拡大につながるのではないか? ということを提案してきました。
しかし、「具体的にはどうやればいいの?」と問いたい方もいるでしょう。
実はフィードバックには、色んな種類があります。
今回はそのフィードバックの種類を確認していく過程で、ひいては効果的なフィードバックのコツやタイミングについて考えていきたいと思います。
●「最終フィードバック」「同時フィードバック」
「最終フィードバック」と「同時フィードバック」は対になる存在です。
「最終フィードバック」とは運動した後に、「同時フィードバック」とは運動中にヒントを与えることです。
「ボタンを押すタイミングが遅れているよ」「腋がひろがっているよ」という情報は、その遅れた動作の直後に伝えることで次の操作にすぐ反映することができます。
これが「同時フィードバック」であり、「同時フィードバック」のメリットにあたります。
例:ボタンを押すのが遅れてきてるよ!
例:もっと「ココ」にタイミングを合わせて!
例:今、練習しているコマンド入力は、「←/↓\→+パンチ」だよ!
しかし、欠点もあります。
あれもこれも色んな指示を運動中に出し、複雑な指示を耳に入れるのはプレイヤー本人の集中力を乱しかねません。難所に差し掛かっているのに、後ろのギャラリーからやんややんや言われたら、「うっせーよ!」と私でも怒っています。
「同時フィードバック」は厳選して、
・重要で優先順位の高いもの
・簡単に伝わる指示のみ
・プレイ前にちゃんと『これが今回の最重要課題です』と示しておく(【1:事前情報】)
を心がけておくのが吉でしょうか。
最重要じゃないフィードバックは、最終フィードバックで行えば良さそうです。
●「帯域幅フィードバック」
ミスが一定の幅より、大きくなった時のみヒントを出す方法です。
例えば、対戦格闘ゲームの必殺技のコマンド入力を練習するケースでは、以下の帯域幅フィードバックが考えられます。
例:10秒間、まったく操作が行われないorとんちんかんな操作をしている場合、コマンド入力を記憶できていないとみなし、課題の操作をデカデカと再表示する。
例:5回連続でボタンが押すのが遅れた場合、「もっと早くボタンを押して!」と表示する。
●「要約フィードバック」「平均フィードバック」
あまりに頻回にヒントを与えすぎると、プレイヤーがそれに依存し、却って学習効果が落ちることがあるとされています。(依存性産出特性といいます)
この予防策として、繰り返し課題に挑戦してもらってから、まとめてフィードバックを行う手法があります。これを「要約フィードバック」といいます。
例:音ゲーで1曲まるっとプレイした後にリザルト画面を表示する
例:30秒間課題をやってもらい、操作の改善点をまとめて示す
なお、「要約フィードバック」の中で、結果の平均値のみを伝える変法を「平均フィードバック」と言います。
●「漸減的フィードバック」
プレイヤーが慣れないうちは頻回にヒントを与え、スキルの向上とともに頻度を落としていく手法です。
前述のようにあまりに頻回にフィードバックすると指導者に依存してしまう恐れがあるため、慣れとともに徐々にヒントを少なくしていきます。
筆者の知っているフィードバックの種類はこれぐらいです。
お勧めは、「帯域幅フィードバック」でしょうか。
ただやみくもにヒントを出すのではなく、ミスが多い人に多くなったタイミングでヒントを出した方が、プレイの邪魔にならずに済みそう。
ミスが少なくなれば自ずとヒントを出す数も減るはずですから、「漸減的フィードバック」の条件もあわせて満たせそうです。
■ 今日のまとめ ■
・操作中にヒントを出すことを「同時フィードバック」というよ
・終了後にヒントを出すことを「最終フィードバック」というよ。
・ミスが設定した範囲より大きくなった時だけヒントを与えるのを、「帯域幅フィードバック」というよ。 ←おすすめ
・複数の挑戦の後にまとめてヒントを伝えることを、「要約フィードバック」というよ。
・プレイヤーの技術の向上に合わせてヒントを出す頻度を減らすのを、「漸減的フィードバック」というよ。
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