35. ターゲットが2つある
ターゲットという言葉があります。
直訳すれば、標的。
あるいはビジネスの世界では、『想定している顧客層』を指す言葉です。
さて、ビジネスにおいてターゲットはできるだけ、具体的に定めた方がいいとされています。ターゲットは『サラリーマンの男性』『インスタグラムに食べたランチの写真を投稿する20~30代の女性会社員』といった具合です。
あるいは二兎追うものは一兎も得ずといった具合で、ターゲットは極力絞りこんだ方がいい。2つも3つもあるなんて、論外!
マーケティングの基礎を学んだ人ほど、『ターゲットは1つしか存在してはいけないんだ』と考えがちのようですね。
それは原則としては是であり、間違ってはいないのですが。
例外というものもあります。それは、
【Aというターゲットにアプローチすると、Bというターゲットも反応する】
ケースです。
なんのこっちゃと思われるかもしれませんが、一例として『プリキュア』シリーズが挙げられます。
2004年に第1作目『ふたりはプリキュア』からかれこれ15年以上も続いている人気の変身少女アニメのシリーズ作ですが、本作のメインターゲットは、幼児から小学生(4~12歳)の女児とされています。
アニメの脚本内容も女児向けにチューンナップされていますが(※1)、本作にはもう1つの隠れターゲットが存在します。
変身少女ものが好きな、20歳以上の男性です。
そもそもプリキュアに限らず、成人男性のアニメファンにとって、変身ヒロイン、魔法少女ものは定番の人気ジャンル。『魔法のプリンセス ミンキーモモ 』『美少女戦士セーラームーン』『カードキャプターさくら(※2)』など、これらもプリキュアと同じく女児をターゲットにした作品群ではありますが、成人男性ファンにも好評を博してきました。
また、今年55周年アニバーサリーを迎える『ウルトラマン』シリーズも例に挙げられるでしょう。
2020年に放送された新作『ウルトラマンZ』も、基本的には男児向けの作品です。しかし、テレビだけでなくYoutubeでもリピート配信したことで、国内外の広い客層にアピールすることに成功。
小さいころウルトラマンが大好きだった男性陣が、成長してからも本作の関連商品(フィギュア、ロボットの玩具)などを購入し、楽しそうに商品をレビューしている。
そんな男性Youtuberによる動画を幾つも見かけました。
『ゴジラ』などの怪獣作品、戦隊ヒーローもの。海外に目を向ければ、マーベルコミックスの作品も該当しそうです。
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たしかにやみくもに複数の販売ターゲットを設定するのは、作品の内容も中途半端になり、よろしくない。
でも、このようにメインターゲットAにアプローチすると、ターゲットBも反応する。という条件が揃う場合においては、ターゲットが2つあっても成立しえます。
というのが、私がマーケッターの先生から教わった理屈ですが、なかなか実現するのは難しい。
私もかつて、『メインターゲットAにアプローチすると、ターゲットBも反応する』理論で、商品を1つ作りました。が、売り上げは中の上どまり。
大失敗というわけではありませんが、目標の数値には達しませんでした。
ただし、こういう売り方、アプローチの仕方もあるんだ。
絶対にターゲットを1つに絞る必要はないんだ。
ということを知っておくと、思考が柔軟になり、なにか新しいサービスの展開のきっかけになるやもしれません。
(※1) 脚本も女児向けにチューンナップ
『女児を怖がらせすぎるシーンはない』『出血はしない』『成人男性向けのサービスシーンがない』など。
(※2) カードキャプターさくら
厳密にいえば、この作品の主人公である『さくら』は変身しないが、フォーマットは変身少女のもということで。毎回、色んなコスプレをする。
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