17. ユーザー満足度を決める4つの法則
自分の手掛けた作品で、皆に楽しんでほしい。
クリエイターならば、誰もが持っている願望ですよね。
ではどうすれば、お客さんは満足するのか?
質のいい作品を作る? トレンドを抑える?
驚きと感動を届ける?
どれもが正解である気がしますが、ちょっと表現が抽象的でしっくりきません。
そこで今回は、『サービスの満足度を左右する4つの決まり事』を法則としてご紹介。心理学からも引用して、分析を行っていきたいと思います。
●1.アマチュアは加算、プロは乗算
インディーズとプロの市場とでは、ユーザーの評価方法が違うという法則です。
仮に、【絵】【シナリオ】【音楽】【ゲーム性】【価格】の5つの項目を、0~5の6段階で評価したとします。
【例】
絵:5点 シナリオ:0点 音楽:4点 ゲーム性:2点 価格:1点
上記の例の場合、アマチュアの世界だと、加算(足し算)で評価。
5+0+4+2+1=12点 と判定されます。
しかし、プロの世界だと、乗算(掛け算)で評価。
5×0×4×2×1=0点。
……そう、掛け算は0をかけると、答えは常に0になってしまう。
つまり、プロの市場は1つの項目だけでも落第点を取ると、商品失格の烙印が押されるという法則です。
我々は、本来、人々の個性を認めろ。短所だけでなく長所も認めるようにと教わりがちです。
『世界に1つだけの花』とは、よく言ったもので、運動ド下手でも、勉強ができればいいじゃない、優しければいいじゃないか――てなわけで、あるジャンルで落第しても、存在意義そのものを否定されることはありません。
同人でもおなじで、たとえ絵が粗削りでも、シナリオが面白ければ評価される土壌があります。しかし、プロ市場ではそうはいきません。
極端な例だと、Amazonの商品レビューで『通販で本を取り寄せたら、表紙に傷がついていた。☆1(最低点)』なんて評価されているのを目撃したことがあります。
表紙に傷がついているのは郵便・宅配業者の問題で、販売元の責任じゃないのですが、お客さんの中には手元に届く過程までも、サービスの一部とみなす者もいる。
あらゆる面で、完璧なサポートを求めてしまう、ユーザ心理がうかがえます。
プロ市場は、1つの部門とて、落第するわけにはいかない怖い世界なのです。
言い換えれば、落第点さえ取らなければ、他の評価項目で挽回できるという教えでもあります。
●2.評価はマックスと最後の平均値
心理学において、『ピークエンド効果』と呼ばれている法則です。
映画などを観る場合、我々は全てのシーンを吟味して、それらの平均を全体の評価として充てているつもりですが、実は違います。
興奮の最高値と、最終値の2つの平均が、全体の印象を決めています。
もう一度、言います。
ユーザーの満足度は、【最高値】と【終わりの値】の平均です。
オチが重要というのは万人が頷くところですが、それ故に『風呂敷を畳まなければいけない』という課題もあり、なかなか思うような面白いシーンにはし辛い。
よって、それとは別に盛り上がるクライマックスシーン、コース料理におけるメインディッシュを用意するのが、お客さんに気持ちよく帰ってもらうためにも有効だと分かります。
●3.初頭効果と終末効果
ずばり、エピソードの『始まり』と『終わり』が記憶に残りやすく、全体の印象を決めるという法則です。
ならば、『始まり』と『終わり』に力を入れるのが道理。
『つかみ』と『オチ』は大事といえば、イメージしやすいでしょうか。
ただし、昨今の、ソーシャルゲームなどは『ユーザーが好きな時にやめられる』ため、どこがラストシーンになるかわかりません。
『オチ』のタイミングが確定できないわけで、そのような場合、始まりのシーン。
加えて、【2.評価はマックスと最後の平均値】の法則を踏まえて、それとは別にメインディッシュとなるポイントを用意しておけば、全体の評価を底上げできるであろうことが予測できます。
●4.満足度は期待値との差
心理学における、『期待値バイアス』と呼ばれるものです。
焼肉を食べに行ったとき、まず、私たちは美味しいお肉の味を想像します。
そして、実際に食し――期待通りか、それ以上に美味しいと舌が感じた時に、我々は満足します。
言い換えれば、事前の期待値と実物のサービスとの差が、『満足度』であり、期待を下回ったのであれば『がっかり度』を導いてしまうということです。
俗にいう、ハードルを上げすぎるとよくないって、ヤツですね。
故に、人々を集めるために、チラシとか広告とかで期待を煽るのはいいのですが、やりすぎると、利用者の満足度が下がって自滅します。
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以上、ユーザー満足度を決める、4つの法則をお送りしてきました。
え? ありきたり? 言われなくとも、薄々、わかっていた?
ごもっともです。
ただ、昨今、ネットを徘徊していると、『4.満足度は期待値との差』の罠にはまっているバナー広告を多く見かけるような……。(※1)
基本は大事。だからこそ4つの法則として明文化して、きっちり頭に叩き込んでおくことが、肝要なわけです。
今回はここまで。4つの基本法則を抑えたところで、続きは後編で。
ゲーム制作などの現場でどのように応用していけばいいかを、深堀してみたいと思います。
(※1)
ゲーム内の微々たる小さな特徴を、拡大解釈してキャッチコピーに用いているような、アレのことです。
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