8.『コンセプトワーク』大作戦! 中編
前編では、『1.基本コンセプト』『2.商品コンセプト』『3.表現コンセプト』という3つのステップを踏んで、戦略をねり上げること。
また、作り手視点→利用者視点に少しずつ、転換していく流れを見ました。
中編と後編では、2つの例を見ながら、この道筋を研究したいと思います。
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●『ダイソン』の掃除機
ダイソン社といえば、【吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機】でおなじみ。
サイクロン方式を採用した掃除機の大ヒットで、有名になったイギリスの電気家具メーカー&ブランドです。
Wikipediaで確認すると、このサイクロン方式を創業者であるジェームズ・ダイソン氏が着想したことが、誕生のきっかけであると記されています。
一般的にもこの、【とんでも吸引力】ばかりが目につきがちです。が、よく観察してみると、他にもダイソン氏らの周到な戦略――コンセプトワークが、商品に込められていることに気付きます。
〇高級掃除機である
これまでの掃除機と違って、明らかに販売価格が高めに設定されています。
【付加価値をつけて商品を高く売る】というのは商売の鉄則ですが、ダイソンは【とんでも吸引力】を背景に、それを実現しようとしたと予想されます。
〇実用性をとことん追究
コマーシャルでは、サイクロン方式の吸引力ばかりが強調されていましたが、
『充電式=使うときはコードレスで動かせるので取り回しが楽』
『旧来のように紙パックを交換する必要がない』
など、便利ポイントが他にも盛りだくさんでした。
〇実用性をとことん視覚化
ダイソンの掃除機のデザインは、とても個性派です。
まず、件のサイクロン方式の部分を、なんとスケルトン化。掃除機内に吸いこまれたホコリが、まさに竜巻さながらにグルグル回っている様子を見えるようにしました。
また、外の装飾も【機械のエンジンやパイプ】を彷彿とさせる、特徴&無骨なデザインに。意図的に【機械の塊】っぽく見せることで、超高性能マシンであることを主張したのではないでしょうか。
以上が、ダイソン掃除機の特徴といえそうです。
まず、【とんでもない吸引力】のサイクロン方式を開発したことが、この掃除機ヒストリーの始まりでありますが、『新発明を武器に、高級な掃除機を売ろう』『高性能をアピールしよう』という別の強い意思が垣間見えます。
・新発明を武器に、高級な掃除機を売る
・高性能をアピールする
この2つの項目が、会社視点で目標・戦略を最初に定める『1.基本コンセプト』に該当しそうです。
続いて、『1.基本コンセプト』を実現するために、具体策を定める。
すなわち、『2.商品コンセプト』ですが、
・コードレスで使える
・紙パックの交換不要
・高機能であることをビジュアル化したデザイン
ざっとまとめると、これらの要素が該当しそう。
特に注目したいのが最後の『高性能のビジュアル化』でしょうか。
【どんでも吸引力】の心臓部である装置がスケルトン化され、中に吸いこまれたホコリが外から見えるんですから、スーパーマーケットの実演販売などで使っても説得力がアリアリ。
また、主婦層、特に日本では、親しみやすいデザインの家電の方が受け入れられやすそうなのに、あえて違う(超実用性主義と分かる)形にしたのは、まさに英断。
これらの特徴は、『1.基本コンセプト』の段階で、【高級な掃除機】と設定し、【高性能をアピール】することを決めたであろうから、生じたといえます。
もし、基本コンセプトで、『お友達のような親しまれる掃除機』と決められていたら、形状も価格もまったく違う商品ができあがっていたことでしょう。
しかも、これらの思惑をほとんど表では出さず、販促では【吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機】のワンポイントだけ強調しました。(表現コンセプトに該当)
ワークの上流のコンセプトは原則、社内向けのメッセージです。
とても大事な戦略ではあるけど、外部には原則、知らせるべきではない、という基本をきっちり抑えているわけですね。
図解すると
〇1.基本コンセプト ←社内だけで情報共有
『新開発のサイクロン方式を採用する』
『高級品として売る』
『オンリーワンな高性能をアピール』
〇2.商品コンセプト
『サイクロン方式採用で、すごい吸引力を実現』
『高性能であることをデザインで見える化』
『コードレス化&紙パック不要で便利』
〇3.表現コンセプト あるいは セールスポイント ←社外に発信
『【吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機】のキャッチコピー』
『↑の補足用として、【コードレス化&紙パック不要で便利】の情報』
『日本展開では、いかにも吹き替え映像風のCMを放送→海外からすごいヤツがやってきた感を演出』
こんな感じでしょうか。
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以上、私こと板皮類の予想が、多分に含まれる分析でしたが、コンセプトワークの流れを知るには、およそ不足がない案内にはなったかなと思います。
続きは、後編にて。もう一度、オリジナルの企画を作る過程を提示して、コンセプトワークのまとめとしたいと思います。
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