7.『コンセプトワーク』大作戦! 前編
2019年5月1日、更新分の記事、
【3.『コンセプト』と『セールスポイント』】
https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054888998169/episodes/1177354054889038131
では、企画屋やクリエイター業において、理解していると大きな武器になる、
【コンセプトとセールスポイントとはなにか?】
を語らせて頂きましたが、今回からはついに待望の? 応用編!
ユーザーの心に刺さるコンテンツ・商品を作るための『コンセプトワーク』について、考えてみたいと思います。
軽く、前回の復習から。
コンセプトと、セールスポイントの定義は、
・コンセプト:社内の意思を統一するために、目標や目的、方向性を記したもの
・セールスポイント:社外の人間へ向けて、商品の特徴や利点を示したもの
すなわち、
・コンセプト:社内向けのメッセージ
・セールスポイント:社外向けのメッセージ
と、明確な違いがあること。
しかしながら、コンセプトを突きつめた先に、セールスポイントが生じる場合があること。
また、コンセプトには複数の種類があることに、触れました。
今回は、そのコンセプトを突きつめ、セールスポイントへ昇華していく過程の1つ――『コンセプトワーク』のお話となります。
●コンセプトは3種類くらいあるらしい
まず、前提として、コンセプトは洗練させていく過程で、3段階ほど発生します。
以下に提示しますが、マーケッターの先生によって命名が異なったり、3段階ではなく2段階になったりするようです。
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○1:基本コンセプト(初期・原始)
コンセプト――コンテンツの方向性を決めるにあたって、まずは、作り手の立場で(この視点を、プロダクトアウトといいます)商品への想いや狙いを文章化した、『基本コンセプト』から定めるのがお勧めです。
このコンテンツを通じて、アナタは何を実現したいか。商品の狙いは何か。
クリアしなければいけない課題などを、箇条書き風にまとめます。
たとえば、↓のような感じ。
【例1】
『50代以上のシニア層の不満を、全て解決するコンセプトカー』
2019年3月にわが社が行った最新のアンケートで、50代以上の不満点は1位○○、2位●●、3位◆◆であることが判明しました。これらすべての解決策を盛りこみ、世代別シェア50%獲得を目指します。
【例2】
『究極のおっぱいソーシャルゲーム!』
萌えキャラファンにおっぱいが嫌いな男はいません。小さな胸から巨乳好きまで、あらゆる男子のバストに対する需要を満たすことで、幅広いユーザー層を開拓します。
【例3】
『若年層の新規開拓』
長年愛されてきた主力商品●●のデザインを若者向けにリニューアル! わが社が弱かったT層(13~19歳)の顧客を獲得します。
のように、題目と簡単な補足を1~3セット程度、提示します。
開発側の狙い、目標――開発者しか目にしないはずのテキストですから、企業の都合、夢、打算的な文言が並んでもOK。
ある程度、誰をターゲットにするのかを意識しつつ、プロジェクトを進行していくうえで外してはいけないポイントをまとめます。
コンテンツの大綱、根っこ、スタート地点になるため、私などは、『初期コンセプト』『原始コンセプト』などと表記したりしています。
また、『テーマ』と呼称する、マーケッターの先生もいるようです。
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○2:商品コンセプト
『基本コンセプト』がおよそ定まったら、次のステップ。
どのような特徴をもつ商品を作って、その目標を達成するかを考えます。
前述の、
>【例2】
> 『究極のおっぱいソーシャルゲーム!』
> 萌えキャラファンにおっぱいが嫌いな男はいません。小さな胸から巨乳好きまで、あらゆる男子のバストに対する需要を満たすことで、幅広いユーザー層を開拓します。
これを例にとると、『究極のおっぱいソーシャルゲーム!』とうたったところで、根拠となる仕組みを用意しないと、お客さんの心には刺さりませんよね。
そこで、どんなセールスポイントを用意するかをこの段階で脳内に描きつつ、コンテンツの長所を決めていくのがこのステップの役割です。たとえば、↓のように、
【例4】
『著名おっぱいイラストレーターが多数参戦!』
●●先生、××先生をはじめ、小さいバスト、人気&SNSでの拡散力がある原画家が、参加を確約済み。イラストレーターの予算に従来の2倍を投じ、業界No1のハイクオリテなキャラクターイラストを実現します。
【例5】
『オール乳揺れアニメーション!』
Live2Dを用いて、立ち絵&イベントCG、あらゆるヒロインのイラストで乳揺れを表現! これらの動く魅力を動画・バナー広告にも活かし、販促力を高めます。
【例6】
『あらゆるバストサイズが登場!』
販促には巨乳キャラ、しかし課金では控えめなバストのキャラが有利だと言われています。本作では、様々なタイプの原画家に打診し、どちらの需要もカバー。幅広い客層に訴求していきます。
【例7】
『新システム! バストサイズお好み!』
入手したキャラクターのバストサイズは、大小2パターンのどちらかを選べます。
バストサイズの変更には有料アイテムが必要とし、本の魅力とするとともに課金ポイントとします。
1~4個程度の箇条書きで記すのがおすすめです。
こうやってまとめてみると、最初の『基本コンセプト』が製作者の都合一色だったのに対し、この段階ではお客さんの視点が入っているのが分かると思います。
一方で、【開発費】や【課金ポイント】に触れるなど、開発サイド向けの説明も混在しています。
いわばこの『商品コンセプト』は、製作チーム内だけでなく、上司や、クライアント、流通とかの近しいチーム外の人に、
【こんなセールスポイントがある商品を考えてるんやけど。こういう理屈でユーザーの胸に刺さって、こんなメリットがあるんやで】
と、ユーザー視点(これを、マーケットインといいます)と、プロダクトアウトの両方の視点を踏まえて、説得するための文章と定義できそうです。
また、企画にどんな特徴を載せるか=どれだけの予算・スケジュールが必要か、どんなスタッフが適任か分析できるようになるのも、この段階を終えてからになります。
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○3:表現コンセプト
『2:商品コンセプト』の段階で、どんなコンテンツを創るか。セールスポイントの内容までおよそ枠組みが決まりました。が、【開発費】をはじめとする生々しい文言が満ちあふれているため、部外者には気安く見せられません。
そこで、お客様の目に触れるとまずい表現を排除し、外部向けにアレンジしたのが、この『表現コンセプト』といえるでしょう。
【例8】 ※【例4】の修正版
『●●先生、××先生最新作は、最乳ファンタジーRPG!』
爆乳バトルでおなじみの●●先生、こだわりのちっぱい××先生をはじめ、超豪華イラストレーターが参戦! ロリ巨乳からエルフ、オネショタお姉さんまで、あらゆるおっぱいが、戦いに疲れたあなたの心をぴょんぴょんさせます!
【例9】 ※【例5】の修正版
『至高の乳揺れアニメーション!』
立ち絵もイベントシーンでも、萌えヒロインたちの巨乳も、ちっぱいバストも乳揺れ! もちろん、恥ずかしがる女の子の仕草が楽しめる、パイタッチも標準装備です。
【例10】 ※【例7】の修正版
『お好みバストサイズシステムを搭載!』
専用アイテムを使って、ヒロインのバストサイズを、大小2種類にカスタマイズ可能! あなた好みの究極のヒロインを作りましょう!
【例11】
『救え世界! 戦う乙女たち!』
ヒロインの可愛らしさだけでなく、ストーリーも本格派!
崩壊が1年後に迫った●●ワールドを舞台に魅力的なヒロインたちが、団長であるあなたを守るために戦います!
※ さすがにオッパイのことだけ語ってるとユーザーが引くので、【例11】を付け加えました。
※ 商品コンセプトの【例6】説明は、【例7】~【例8】に分散して組みこみました。
コンセプトを突きつめるとセールスポイントに至ることが多いとは説明済みですが、いわば『表現コンセプト』は、その直前の段階のテキスト。
このテキストをたたき台に、営業さんなり、雑誌社の記者さんなりと相談し、使えるものはそのまま『セールスポイント』『キャッチコピー』に転用します。(※1)
まだ、コンテンツの魅力が弱いようであれば、(まあ、おっぱいだけうたっていても、『ゲーム性はカスなのかよ!』と、ツッコまれるでしょうし)前段階の、『基本コンセプト』、『商品コンセプト』に立ち戻って、作戦を練り直します。
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さて、ここまで3種類のコンセプトの概要を説明してきました。
つまり、図解するとこんな感じ ↓
『1.基本コンセプト』
↓
『2.商品コンセプト』
↓
『3.表現コンセプト』
↓
セールスポイントの完成!
『1.基本コンセプト』では開発者視点で、コンテンツの目標を設定。
下流のステップへ進むほど、具体的に戦略を練り、ユーザー視点に近づいていく様子が、わかったかと思います。
つまり、コンセプトを決めるということは、
・戦略を練って具体化する
・開発者サイドの想い・目標を確認したうえで、利用者視点のメリットに変換する
この2つの姿勢を貫くことと、言い換えられます。
『自由に空を飛びたい』という子供の夢を叶えるのは難しいですが、『旅客機のパイロットになりたい』→『航空大学に入りたい』という風に具体化してくれれば、両親は色々な面でサポートできるようになります。
このようにコンセプトというものは、周りの共感が得られるように、ブラッシュアップすることが肝要なわけです。(※2)
だいぶ記事が長くなったので、今回はここまで。
中編に続きます。
●追記
今回は、『1.基本コンセプト』→『2.商品コンセプト』→『3、表現コンセプト』→セールスポイント、までの流れをご案内しましたが、さすがにこれら全部を誰かに説明するのは、情報過多でしんどいです。
なので、書類などに書き起こす場合、私だったら一部の表記を省きます。
たとえば、『企業内で予算が降りるように、プレゼンする』場合は、『1.基本コンセプト』『2.商品コンセプト』の2つをピックアップ。
・『1.基本コンセプト』→『コンセプト』
・『2.商品コンセプト』→『セールスポイント』
と、呼び変えて、資料に記載するでしょう。
企業内の人間しか見ない資料ですので、コンテンツのメリット・デメリットがストレートに伝わる、この2つだけを示した方が、得策だからです。
対して、お客さんの目に触れる恐れがある環境では、
2019年5月1日、更新分の記事、
【3.『コンセプト』と『セールスポイント』】
https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054888998169/episodes/1177354054889038131
で、提示した通り、企業の都合(エゴ)がだだ漏れしてしまう、『1.基本コンセプト』『2.商品コンセプト』を見せるのは、慎重になるべきです。
(※1) ですので、コンセプトの内、最終段階の『3.表現コンセプト』だけは、例外的にお客さんの目に触れる可能性があります。
とくに同人市場や、趣味性の高いコミュニティ内だと、セールスポイントという商売っ気ありありの文言を嫌って、この『3:表現コンセプト』をセールスポイントの代わりに提示するケースが散見されます。
(※2) 逆に、企画を通じて達成したい最初の狙いを、『1.基本コンセプト』で書き残しておくことも同じくらい大事です。
基本コンセプトで『若い社員の感性を取り入れた斬新な商品を作る』と定めたのに、プロジェクトがうまく進行せず、ベテランが介入することは良くあること。
結果的に、ベテランの考えしか踏まえられていないコンテンツが完成したら、たとえヒット商品になったとしても、プロジェクトとしては成功とはいえません。
そんな事態を避けるために、最初の『1.基本コンセプト』で、開発チームとして果たさなければいけない命題を、しっかりと明記します。
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