4.『マクドナルドのアンケート』

 『クレームは宝の山』という言葉を聞いたことがあります。


 たとえ、自分たちを責める内容だとしても、サービス向上のヒントになる。

 お客さんの声は、そこまで貴重であるという意味です。


 肯ける標語ではありますが、気になることが一つあります。

 『お客さんの声って、常に正しいの?』


 なんとなく違う気もしますが、根拠は? と問われると、答えにつまってしまう人もいるのではないでしょうか?


 この問題の一つの解として存在する逸話が、今回、ご紹介する『マクドナルドのアンケート』です。


 マクドナルドといえば、皆様おなじみ。ハンバーガーを主力メニューにおいた最強のファーストフードのチェーン店ですが、かの店には、


・『欲しい新メニューは?』とお客さんにアンケートを取ると、必ず上位に入る

・でも、実際に販売すると、ほとんど売れない


 という、逆殿堂入りしたメニューがあります。

 『健康志向の商品』です。


 野菜スティックとか。そういう種のヘルシー食品を指していると思われますが、お客さんの声を反映していざ売り出しても、大苦戦するとか。


 なぜ、こんなすれ違いが起こるのか。

 それは、アンケートを答える時と、商品を買いに来た直後では、お客さんのモチベーションが変わるからだと考えられています。


 アンケートに答えるという作業は、論理的な思考が求められます。

 本能より理性が勝っているわけで、『ハンバーガーやポテトだけだと体に悪いよね』と、知的な熟考の末に、『ヘルシーな健康志向の商品』が欲しいという結論を弾き出したのでしょう。


 あるいは、自分の回答が後世に残るわけですから、『食育を考える、いい子ちゃんを演じたい』という、ちょっとした見栄も影響している可能性があります。


 一方、今まさにどのハンバーガーを買おうかと悩んでいる人は、お腹がペコリーヌ。本能が優位の状態です。カロリーを気にせず、がっつり食したい。

 むしろ、「ぐへへ、体に良くない食べ物は、悪魔的に旨いのう!」「アイ、ラブ、カロリー!」とすら、考えているかも。


 このように同一人物に、同じ質問をぶつけても、ちょっとした環境の変化でその答えが変わってしまう場合があります。


 故に、ユーザーアンケートの結果は万能ではない。


 私の師といえる人の言葉ですが、

 『お客様の声は、商品改善の重要なヒントになりうる』

 という捉え方が、一番、バランスがいいのではないでしょうか。


 お客さんの声はお宝だけど、ちゃんと鑑定する必要がある ―― 取捨選択が大事です。あるいは、商品の改善にはつながるけど、まったく新機軸のサービスを開発するには、アンケートの結果だけでは頼りないカモといった教訓でしょうか。


 いざという時は、今回ご紹介した事案などで理論武装して、お客さんの声万能説を唱える諸先輩方を、うまく丸めこんでくださいねー。(ゲス顔)

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