3周年って何?

アイスティー

どういうことなの?

 三周年 とは


 つまりある何かから三年経った記念ということである。

 じゃあその『記念』って何だろう。と、英語の授業中に考え込む。


 学校が開校した記念、結婚した記念。いや、もっと身近でも良いかも知れない。例えば仲の良い友達と出会った記念、とか。とりあえず『記念』があるから、その『記念』となる出来事が起こったことに対して、お祝いをしたりする。

 大体の人はこんな感じじゃないだろうか? 少なくとも僕はそう思っている。じゃあ正しくはどうなのか、お手軽に検索ができるスマホで調べてみた。

 要約すると、過去に起こった出来事を記念する日らしい。

 僕の考えていたのと凡そ同じだ。だが、僕が考えていたのとはほんの少しだけ違う点がある。

 それは――――――


「おいっ藤崎とうざき! お前当てられてるぞっ!」


 ――――――えっ?


「藤崎ィ……、一時限目から居眠りかぁ? そこまで補習プリントが欲しいとは……先生感心だぞ、ハッハッハッ!」


「うぇ!? あのっ、いえっ! 寝てないです!」


 慌てて立ち上がり、弁明を始めるが時既に遅し。その場でクラスメイトの笑いと追加のプリントを手にするハメになった。



 それから数時間が過ぎて、現在は昼休み。場所は変わらず自分の席、変わったというならば、机の上に広げられているものがノートとシャーペンから弁当箱になった、というところ位だろうか。

 さっきの続きだが、スマホの検索と違う点、それは良い出来事に限定していないというところだ。つまり、お腹を丸一日痛めたとしても、本人が記念だと言い張るのならそれは記念になるし、『お腹を一日痛めた』記念日になりうるのだ。

 では、何故僕はこんなどうでもいい事を考えているのか、それは一人の青峰あおみねという女子の発言が原因である。

 その青峰とは、同じ中学に通い、今では高校生になり、学校こそ違うが未だに一緒に登校する仲で、今日の朝に道を分かれる時にこんな事を言ってきたのだ。


「そう言えば……今日は三周年のなんだよ、藤崎くん? 何か……分かる?」


 はて、今日、三月二十六日に何かあっただろうか? いや、あるにはあったがそれを記念日と言うには中々気が引ける。その出来事とは、まだ同じ中学に通っていた三年前、彼女が登校中に、唐突に気を失って倒れたことだ。当時はあまり関わりがなく、同学年というだけで、挨拶程度の仲だったし、もし他に人がいるのなら、その人に任せたかった、が、周りには誰もおらず僕が何とかしなければいけないという雰囲気を一人で感じていたのを覚えている。勿論僕は困惑した、とりあえず保健の授業で聞いたうろ覚えの介抱をして、救急車はまだか、誰かに見られたらどうしよう。などあたふたして、挙句の果てには涙目になっていた。情けない、と思うかもしれないが、全くその通りだ。

 ま、まぁ。それはさて置き、その後は救急車で運ばれて、その日はそれっきりとなる。後日お礼を言われてから、登校中に少しずつ話をするようになって今に至る。のだが、これが何故記念日になるのか、全然分からない。だって彼女からしたら登校中にいきなり倒れた厄日だし、僕からしても、人助けをした。と言えば聞こえはいいが実際にはほとんど何もしていないし、救急隊員の方に泣いているのを見られて恥ずかしいだけのロクでもない日だった。

 何か見落としは無いかともう一度内容を反復してみるが、やはり記念となるようなこと何も起こっていない……と思う。


「うーん、ただの冗談だったのかな……?」


 まぁ、また帰り道に会うし、その時に聞いてみればいいか……。

 そう思い、残り少ない昼休みの時間をまったり過ごすのだった。






 ―――――――――――――――――――


 これは、場所は変わり、ある別の高校での昼休みの会話である。


「ねぇ、青峰さん?」


「んー? 何ー?」


「結局記念日って何なのー?」


「誰にも言わないって言うなら教えるけどぉー……」


「言わないっ! 絶対!」


「ほんとぉー?」


「ホントホント!」


「えっとね………今日はなんだ……えへへっ」


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