第7話 状況

トリになった。

尼野さんの、師匠の黄色い人が出てくる。


ニコニコと登場している。

お客さんを笑わせるのが仕事なので、暗い顔して出てくれば失格か・・

尼野さんを見る。

とても真剣だ。


今、壇上いる師匠は、黄色い着物は着ていない。

あれは、番組の中だけだが、イメージが変わる。


同じ人には違いない。

でも・・・

当たり前だが、さすがにプロだ。


しかも、真打ち。


客席は笑いにつつまれている。

しかし、尼野さんは笑っていない。


勉強しているのか?


落語を楽しみたいところだが、気になって仕方がない。

色々な事が・・・


その日の演目が終わり、帰ろううとすると、

「康夫くん、来て。師匠に会わせるから」

「本当だったの?」

「うん。お願い」

その表情はとても真剣だ。


何かあるのか?


「わかったよ」

「ありがとう。」

尼野さんに、手を引いて立ちあがる。


いや、自力で立てるんだけど、好意に甘えた。


楽屋に案内される。

「師匠、お早うございます。お疲れ様でした」

「由紀子、隣の人がそうか?」

「はい」

「後は、わしらで話すから、お前は仕事をしなさい」

「はい」


尼野さんは、師匠の着物をたたんだりと、忙しく働いている。

見習いの仕事か・・・


「康夫くん、でしたね。由紀子から聞いるよ」

「はい・・・って、何をですか?」


楽屋には、他の師匠方やお弟子さんたちもいて、

所せましと働いているが・・・


状況がつかめない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る