第6話 寄席
寄席についた。
「康夫くん、ここが寄席だよ」
「見ればわかるよ。で、これからどうするの?楽屋」
尼野さんは、首を横に振る。
「違うよ。聞くんだよ」
「何を?」
「落語」
「誰が?」
「君と私」
「いつまで」
「トリまで」
ダメだ、覚悟を決めよう。
「あっ、スマホの電源切っておいてね」
「尼野さんに、返した」
「違うよ。君のスマホ」
「俺は、持ってない」
「信じられない」
悪かったな・・・
寄席に入る。
顔パスのようだ。
知っているのか?
事情を・・・
俺にはようわからん。
壇上では、若手が落語を披露している。
二つ目くらいか・・・
テレビで見た事ある人もいる。
二つ目から真打ちまでは、個人差もあるが、
10年が目安と聞いた事がある。
尼野さんを見る。
笑顔はなく、とても真剣だ。
「芸は見て盗め」か・・・
あの方は・・・確か・・・
尼野さんにとっては、あにさんにあたる方か・・・
しかし、芸風が師匠に似ている。
引き寄せの法則ではないが、自分に似た人のところに、
弟子入りするように、出来ているのかもしれない・・・
たしか寄席は、前の人がやった演目はしてはいけないと聞いたことがある。
そのために、その日誰が何をやったか、記録されているらしいが・・・
確かにベテランでないと、後は務まらないな・・・
いや、難しい事は考えるのはやめて、今は楽しもう。
だんだんと、お客さんが入ってきた。
「康夫くん」
「何?」
尼野さんに小声でささやかれる。
「もうすぐ師匠だから」
「うん」
「テレビのイメージは捨ててね」
「・・・ああ」
頷くしかなかった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます