第2話 あからさま

「あのう、どちらさまですか?」

俺はスマホから流れる声の主に訊いてみた。

「このスマホに出られたという事は、児童公園におられるんですね?」

「そうですが?」

「おめでとうございます。あなたはラッキーボーイです。

今から、お迎えにあがります」

俺は、スマホを切った。


やはり、胡散臭い電話だったか・・・

しかし、手の込んでるな・・・

他の事に頭を使えばいいのに・・・


するとまた、スマホがなった。

「♪げらげら笑ってみるテレビ~」

メロディに合わせて唄ってみた。


「意外と面白いなこれ」

メロディは進む。


やがて、サビになる。


「♪それが天下の、笑点だーよ。プホ」


楽しいな、これ・・・


再びスマホがなる。

「もしもし」

「あっ、気が済んだ?」

「何が?」

「唄ってたでしょ?」

「見てたのか?」

「うん」

どこだ?どこにいる?


「ここよ。君の目の前の木」

木の方に目をやる、


木陰から、着物姿の女の子が出てきた。

でも、見覚えがあるような・・・


「やあ、畑山康夫くん、元気?」

「あっ、たしか・・・クラスの・・・何だっけ?」

自慢じゃないが、人の名前を覚えるのは苦手だ。


「君は、クラスの女の子の名前も覚えてないの?」

「うん」

「即答だね。教えてあげる。尼野由紀子よ」

「あっ、そうだ。尼野さんだった。でも、どうしたの?その格好」

「あっこれ?私、落語家なんだよ」

「ウソ」

信じられん・・・


「まだ見習いだけどね。もうじき前座になるんだよ」

「そうなんだ。おめでとう」

「ありがとう」

嬉しそうに微笑む。


「で、どうしてこういう事をしたんだ」

「師匠から、テストされたの」

「何を・・・」

「君を連れてくるようにって・・・」

「何で俺を」

「誰でもいいんだけど、君が一番のってくれそうだったから・・・」

俺は、だしか・・・


「ちなみに、その師匠の名は」

「こういうこと、やりそうなのは1人しかいないでしょ」


ああ、黄色い人ね・・・

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