縁は異なもの

勝利だギューちゃん

第1話  スマホの忘れ物

「触らぬ神に祟りなし」

それを信条としている。

道に何が落ちていても、拾わない。


物でも財布でも、携帯でも・・・


その日は、日曜日の昼下がり。

見渡す限りの日本晴れ。


テスト明けで疲れた俺は、気晴らしに散歩に出かけた。

運動部の連中は、早速練習をしているが、

帰宅部の俺には、関係ないのだ。


ていうか、俺では厳しい練習についていけない・・・

情けない限りだ。


歳を取った時、「あの頃体を鍛えておけばよかった」と、後悔するだろうが、

その時の俺に任せて、今はこの時間を楽しもう。


適当に散歩をして、公園に入る。

児童公園とは名ばかりで、子供はいない。


何人かのお年寄りがゲートボールで、楽しんでいる。


それを遠くに見ながらベンチに座り、軽く食事をする。

「元気で何より」


ふと横を見ると、スマホがあった。

誰かの忘れものか・・・


まっ。いい

そっとしておこう・・・


その時、スマホの着信音が鳴った。

「これは・・・笑点のテーマ?渋いな・・・」

心の中で、歌詞が流れてきた。


「終わったな」

するとまた、すぐになった。


あそこのお年寄りの方の、どなたのかな・・・


俺は思い切って声をかけてみた、

すると、全員が首を横に振った。


「にいちゃん、わしらはスマホはつかいこなせないよ」

だそうだ・・・


しばらくすると、また鳴った。


警察に届けようと思ったが、迷惑なので、

仕方なく出て、事情を説明しようとした。


「もしもし、このスマホの持ち主ですか?」

「あっ、ようやく出てくれましたね」


女の人の声がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る